遺言書保管制度ってどんな制度?概要、費用、注意点など分かりやすく解説
遺言は自分の財産を家族や後継人にどのように残したいか、自分の意思や想いを確実に伝えるための手段です。
確実に遺言書を残す手段として法務局の「遺言書保管制度」を利用することが可能です。
この記事では、
- 自筆遺言書保管制度の概要
- 保管所の探し方
- 申請に必要な費用
- 申請に必要な物
- 遺言書の保管期間
- 申請前に考えて欲しい制度のデメリット
を書いています。
目次
法務局での遺言書保管制度とは
遺言書保管制度とはそもそもどのような制度なのでしょうか。
自筆証書遺言を法務局に預け、画像データ化して保管する制度です。
2020年から始まりました。
では、法務局に預ける事でどのようなメリットがあるのでしょうか。
①遺言の形式ルールを確認してもらえる
申請時に窓口で法務局の職員から、遺言の形式ルールが守られているかチェックを受けることができます。
仮に形式ルール違反があった場合でも、窓口で間違いを指摘してもらえることで遺言を訂正して適切な状態で保管できるのです。
→形式が間違った自筆証書遺言書による無効化が防げます。
② 法務局により安全に保管される。
遺言を法務局に保管してもらうことで遺言の偽造や書き換えは困難になります。
遺書を各自で保管する場合の1番大きな弱点を克服できます。
→偽造や書き換えを防ぎ、紛失も心配ありません。
③ 死亡時に遺言の存在が通知される
遺言者が亡くなったタイミングで、指定した相続人や受遺者に遺言についてお知らせの手紙が送られます。
④家庭裁判所での検認の必要がない
遺言書保管制度を利用している自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認手続きを受ける必要がありません。
保管所の探し方
自筆証書遺言書保管制度を利用できる法務局は、全国に312カ所あります。
その中から
- 遺言者の住所地
- 遺言者の本籍地
- 遺言者が所有する不動産所在地
上記のいずれかを管轄する法務局で申請手続きをします。
全国どこの法務局でも利用できる訳ではないのでご注意ください。
都道府県別に遺言書を保管できる法務局が記載されているリンクはこちらです⇒法務省HP
遺言書保管に必要な費用
遺言書の保管申請にかかる手数料は3,900円です。
手数料は入印紙を手数料納付用紙に貼り付けて支払います。
その他、遺言書保管制度でかかる手数料を一覧にまとめました。
手続き | 手数料 |
保管申請 | 3,900円 |
閲覧請求(原本) | 1,700円 |
閲覧請求(モニター) | 1,400円 |
遺言書情報証明書の交付請求 | 1,400円 |
保管事実証明書の交付請求 | 800円 |
申請書、撤回書の閲覧請求書 | 1,700円
|
遺言書保管に必要な物
遺言書保管申請をするためには、用意する物があります。
•遺言書
• 申請書 •添付書類…本籍の記載のある住民票の写し等(作成後3か月以内) •本人確認書類…マイナンバーカード/ 運転免許証/運転経歴証明書/旅券/乗員手帳/在留カード/特別永住者証明書 •手数料 …3900円(収入印紙を手数料 納付用紙に添付) |
以上のものをそろえて、予約した日時に遺言者本人が遺言書保管所に出向いて申請します。
法務局での保管期間
保管する遺言書は、遺言書原本及び画像データとして適切に長期間保管管理所にて保管されます。
- 遺言書原本は遺言者の死亡の日から50年間
- 遺言書の画像データを含む情報は,遺言者の死亡の日から150年間
遺言者の生死がいつか明らかでない場合は、遺言者の出生日から120年を経過した後、50年経過後まで保管してもらえます。
申請前に確認!制度のデメリット4つ
- 保管できる法務局は決まっている
先程も記しましたが、全国の法務局で遺言書の保管を扱っているわけではなく、特定の法務局(遺言書保管所)で遺言書の保管をしています。
近所に法務局があっても、遺言書保管所でなければ保管できません。
地域によっては、遺言書保管所に行く事自体が大変な場合もあります。
- 本人が法務局に行く必要がある
本人のみ申請する事が可能です。
つまり、家族や専門家が代理人として保管申請をすることも認められていません。
法務局に行くことが体力的に難しくなっていたり、平日昼間の法務局の営業時間に行くことができないと、保管制度を利用することは難しいと言えます。
- 遺言書の様式等にルールがある
自筆証書遺言ならすべて保管できるわけではなく、様式等のルールを守っている遺言書のみ保管できます。
以下がそのルールです。
•A4サイズ
•文字が読み取れること •余白が必要 (上部5mm、下部10mm、左20mm、右5mm) •片面のみに記載 •ページ番号が必要 •ホッチキス等で綴じていない |
- 内容の確認はしてくれない
法務局は自筆証書遺言を預かる際に、
①本文が自筆されているか
②署名捺印されているか
③日付が記載されているか
のみを確認します。
以上の3つの要件以外については、一切関与されないため、どのような内容であっても受理されてしまいます。
自筆証書遺言書の特徴を押さえて上手に活用しよう
財産を家族や後継人へ託す方法の一つとして、遺言書を作成するかどうか検討されてる方もいらっしゃると思います。
法務局の遺言書保管制度は遺言書の紛失や偽造などの可能性を軽減でき、安全に保管されるメリットがあります。
その一方で、法務局では遺言の内容まで踏み込んだ助言などはもらえないので注意も必要です。
参考:法務省だより