リノベーション賃貸の失敗を避けるためにはどうしたらいい?
投資用アパート・マンションの リノベーションは、築年数が古くても室内をキレイにすることで賃料のアップと建物の付加価値を高める意味で不動産投資家にとって魅力的な選択肢ですが、失敗のリスクもあります。
今回はリノベーションの失敗を避けるためにはどうしたらいいかご紹介します。
失敗の原因となる要素
築年数が古く、長期間空室の物件に対して行われる空室対策のひとつとしてリノベーションがあります。
リノベーションは、物件の価値自体を高め、再生させる修繕方法として人気がありますが、内容によっては逆に劣化してしまい物件自体の価値を下げる場合があります。
施工不良や安価な素材の使用などが原因となり、壁や床・設備の劣化が早まる可能性があるため、工事内容については慎重に確認する必要があります。
2020年9月から管理することになった築27年の7階建てマンションの一室をもとにリノベーションの失敗原因となる要素を見ていきましょう。
・地 域:埼玉県さいたま市
・構 造:マンション
・専有面積:44.89㎡
・工事内容:2DKから1LDKへリノベーション
・現 賃 料:140,000円(管理費込)
・旧 賃 料:不明※
・工事代金:8,400,000円(概算)
※こちらの事例は管理することになった時、既にリノベーションされていた部屋になります。旧賃料が不明なのはそのためです。
トイレ
掃除が簡単で節水効果があり、デザイン的にも人気があるタンクレストイレですが、タンク式トイレとは違い、直接水道の水圧を利用して洗浄を行うため、2階以上に設置する場合はある程度の強い水圧が必要になります。
水圧が弱いとトイレ洗浄の流れが弱くなりトイレ詰まりの原因になり、金額的にもタンク式トイレと比べて割高になるため、オーナー様の金銭的な負担が増えることになります。
結果として、ご入居されてから度々トイレ詰まりで出動することになり、ご入居様にもご不便をお掛けすることになりました。
洗面台
スタイリッシュなデザインが特徴の洗面台ですが、排水口の穴が小さく配管が細いため、水の流れが悪く、詰まりが原因で出動することになりました。
壁紙
写真映えはしますが、特徴的な赤い壁紙は好みが分かれます。
また、こちらの壁紙は量産品ではなかったため、補修や原状回復工事の際に割高になり納期がかかります。
家具との相性もあるため派手な色のクロスは控えた方がいいです。
キッチン
開放感がありオシャレなアイランドキッチンですが、臭いが広がりやすく汚れが飛び散りやすいというデメリットがあります。
キッチンスペースとして囲われておらずダイレクトにキッチンが見えてしまうため、掃除や整理整頓を怠るとキッチンが散らかった印象になります。
この部屋のリノベーション工事は前管理会社が請け負ったものになるので前賃料等不明な点はありますが、一つ一つの設備にデザイン的なものが多く、部品の調達がしにくい、補修代金が割高になるというデメリットがあります。
もちろん見た目は大切ですが、入居後の使い勝手の良さやメンテナンスのことを考えた場合、作業効率が悪く金額が高いという結果になります。
成功に導くためのポイント
リノベーションの成功には、計画段階からの慎重な準備が欠かせません。ここでは成功に導くための3つのポイントについて説明させていただきます。
利回り
リノベーションによる物件改修が、投資家にとって有益かどうかを判断するためには、改修によって生み出される利回りを検証することが必要です。
一般的に利回りは7%あれば良いとされています。
利回りの計算方法について
最初にリノベーションした後の賃料とリノベーションする前の賃料の差額(アップ金額)を出します。
【賃料アップ金額×12ヶ月=1年間の賃料アップ金額】
続いて1年間のアップ金額を一般的な利回り7%で割ります。
【1年間のアップ金額÷利回り7%=合計金額】
合計金額がリノベーション工事にかける費用の適正価格と言えます。
それでは、前項のリノベーション工事の場合を見てみましょう。
【リノベーション工事費用×利回り7%=1年間のアップ金額】
8,400,000円×7%=588,000円
【1年間の賃料アップ金額÷12ヶ月=1ヶ月の賃料アップ金額】
588,000円÷12ヶ月=49,000円
【現賃料-1ヶ月の賃料アップ金額=旧賃料】
140,000円-49,000円=91,000円
いかがでしょうか。
前項のリノベーション工事の場合、49,000円アップすれば、工事金額は適正価格と言えるということになります。
家賃査定・地域(場所)
家賃査定では、キッチン・トイレ・浴室等の水回りのリフォームや壁・床・天井の張替え、IOT住宅の導入などリノベーションによって設備を一新することで、物件の魅力を高めることができます。
物件周辺の交通アクセスや商業施設・公園などの充実度、治安状況なども家賃の査定に欠かせない項目になります。
また、周辺の家賃相場や入居希望者の需要についても慎重に見極めることが大切です。
投資目線
リノベーションにより物件の条件が改善することで、家賃収入が増加する可能性がある他、物件の競合力が高まり、空室率が減少し収益性が改善することが考えられます。将来的に物件を売却する場合に、市場価値が上昇することで利益を狙うことも可能です。
リノベーションによって生み出される利回りの検証、工事費、リノベーション後の収入、不動産価値改善について総合的に判断し、十分に検討する必要があります。
成功事例
前管理会社のリノベーション事例を紹介しましたが、次は弊社が行ったリノベーション工事をご紹介します。
同じマンションの同階の一室になります。
先ほどのリノベーション事例と比べて、デザイン性や派手さはありませんが、見た目が良く使い勝手のいい仕様になっています。
・地 域:埼玉県さいたま市
・構 造:マンション
・専有面積:44.89㎡
・工事内容:和室付きの2DKから洋室の1SLDKへ変更
・現 賃 料:130,000円(管理費込)
・旧 賃 料:111,000円
・工事代金:2,600,000円(概算)
同じように利回りの計算をしてみましょう。
【リノベーション後の賃料-リノベーション前の賃料=賃料の差額(賃料アップ金額)】
111,000円-130,000円=19,000円
【賃料アップ金額×12ヶ月=1年間の賃料アップ金額】
19,000円×12ヶ月=228,000円
続いて1年間のアップ金額を一般的な利回り7%で割ります。
【1年間のアップ金額÷利回り7%=合計金額】
228,000円÷7%=3,257,142円
合計金額がリノベーション工事にかける費用の適正価格と言えます。
それでは、弊社のリノベーション工事の場合を見てみましょう。
【リノベーション工事費用×利回り7%=1年間のアップ金額】
2,600,000円×8.75%=227,500円
【1年間の賃料アップ金額÷12ヶ月=1ヶ月の賃料アップ金額】
227,500円÷12ヶ月=18,958円
一般的に良いとされている利回り7%を1.75%上回る結果となりました。
トイレ
一般的なタンク式トイレに温水洗浄暖房便座を設置しました。
洗面台
実用的で使い勝手の良いシャワー付洗面化粧台を新設しました。
壁紙
落ち着いた色合いの室内ドアと床材、壁紙は量産品のアイボリーで統一しました。
キッチン
2口ガスコンログリル付のキッチンは実用性を兼ね備えたスタイリッシュなデザインのものを新設しました。
まとめ
投資用のリノベーション賃貸の失敗を避けるためには計画段階の最初に「利回り」、次に家賃査定・投資目線・地域(場所)についての調査が重要です。
「量産品イコール安っぽい」ということは決してありません。特殊な素材は使わず、量産品の範囲内で決定するとリノベーション工事後もメンテナンスしやすい仕上がりになります。
金額が適正かどうかを知ることは、工事費用が高いか安いかの目安になります。投資目線でリノベーション工事を考えてくれているかどうか、施工業者の選定をするための判断材料の一つとして参考にしてください。