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アパート経営の利回りとは?目安や計算方法・確認時の注意点も

 
アパート経営の利回りとは?目安や計算方法・確認時の注意点も
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アパート経営を始める際、チェックしたいのがアパートの利回りです。アパートの利回りは収益性を確認するための指標となりますが、利回りには表面利回りや実質利回りなどさまざまな算出方法があるので注意が必要です。また、所有している土地にアパートを建てるか、土地とアパートを併せて購入するかによっても、基準となる利回りは異なります。

当記事では、アパートの利回りとは何か、目安となる数字や利回りを左右する要素について詳しく解説します。アパート経営を始めようと検討している方は、当記事を参考にして利回りについての知識を深め、アパートの経営を成功させましょう。

目次

アパート経営の利回りとは?

アパート経営の利回りとは、アパートの購入費用・建築費用といった投資金額に対して、物件取得後の賃貸経営で見込まれる利益の割合のことです。

アパート経営を始めるためには、まずは賃貸物件のアパートを購入、もしくは建築する必要があります。アパートの購入や建築には、当然ながら購入費用・建築費用が発生します。しかし、アパートを購入・建築しても、利益がいきなり得られるわけではありません。アパート経営の利益は、入居者からの家賃収入が発生して初めて得られます。

アパート経営は物件の購入費用・建築費用が分かっていても、将来的な利益が判断しにくい点に注意しなければなりません。将来的な利益に見通しをつけて、安定的な経営を実現する上で重要な指標が「アパート経営の利回り」です。

利回りは基本的に、下記の計算式で表します。

利回り(%)=年間の収益÷物件価格×100

利回りの数字が大きいほど収益性が高く、アパート経営の投資効率が高いことを示します。

アパート経営における利回りの計算方法

アパート経営における利回りには、大きく分けて「表面利回り」「想定利回り」「実質利回り」の3種類があります。利回りの種類によって意味や計算方法が異なるため、アパート経営をする方はそれぞれの意味を把握しましょう。

以下では、3種類の利回りが持つ意味と計算方法を説明します。

表面利回り

表面利回りとは、物件の収益性を年間家賃収入と物件価格のみで計算した利回りです。「グロス利回り」「単純利回り」と呼ばれることもあり、物件の収益性をおおまかに把握するときに使われます。

アパート経営における表面利回りの計算式は、下記の通りです。

表面利回りの計算式

表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件価格×100

例として年間家賃収入が300万円、物件価格が4,000万円の場合、表面利回りは下記の通りです。

表面利回り(%)=300万円÷4,000万円×100=7.5%

投資用アパートの物件情報では、物件の利回りを表面利回りで表記するケースが多い傾向にあります。

しかし、実際のアパート経営では、物件の購入・建築にかかる諸費用や、経営にかかるコストが発生します。表面利回りは各種コストを含まずに計算するため、実際よりも収益性が高く見えやすい点に注意してください。

表面利回りを使うシーンとしては、複数の物件間での収益性を比較したいときが挙げられます。アパート経営にかかるコストは物件によって大きな差がなく、コストを省いて計算する表面利回りであっても物件間の収益性をおおむね正しく比較できます。

想定利回り

想定利回りとは、満室状態を想定したケースにおける利回りです。アパート経営の想定利回りは、満室時の年間家賃収入を物件価格で割ることで算出します。

想定利回りの計算式

想定利回り(%)=満室時の年間家賃収入÷物件価格×100

想定利回りの計算式は表面利回りとほとんど同じであり、計算結果にも大きな違いはありません。

ただし、想定利回りは物件の空室を考慮せずに計算する利回りであり、経営にかかるコストを考慮しない表面利回りとは意味合いが異なります。満室状態を想定する想定利回りは、収益性の最大値を把握するときに役立つ指標です。

アパート経営の想定利回りは、購入時点で入居者がいない新築アパートの利回りを計算するときに使われます。

なお、想定利回りの対義語としては「現況利回り」があります。現況利回りとは、現在の入居状態にもとづいて計算した利回りのことです。

購入時点で入居者が存在する中古アパートの利回りは、想定利回りよりも現況利回りで計算したほうが収益性をより正確に把握できます。

実質利回り

実質利回りとは、不動産投資・賃貸経営にかかる各種コストを含めて計算した利回りです。「ネット利回り」や「NOI(営業純収益)利回り」とも呼ばれます。

アパート経営における実質利回りの計算式は、下記の通りです。

実質利回りの計算式

実質利回り(%)=(年間家賃収入-賃貸経営の諸経費)÷(物件価格+物件取得時の諸経費)×100

例として年間の家賃収入が300万円で賃貸経営の諸経費が70万円、物件価格が4,000万円で物件取得時の諸経費が600万円の場合は、下記のように計算します。

実質利回り(%)=(300万円-70万円)÷(4,000万円+600万円)×100=5%

同様の条件における表面利回りは7.5%であり、実質利回りの5%とは数値に大きな違いがあることが分かります。

固定資産税や管理費、その他各種コストを含めて計算する実質利回りは、実際のアパート経営で期待できる収益性に近い利回りです。

アパート経営の利回りの相場

アパート経営を始めるにあたって、利回りの相場がどの程度かを知りたい方は多いでしょう。利回りの相場は「期待利回り」を調べることで把握できます。

期待利回りとは、物件の取得にかかった費用に対して期待される収益性のことです。期待利回りの数値は「投資家は物件購入価格に対して、何%程度の収益性を期待しているか」を示しています。

アパート(賃貸住宅)における期待利回りの相場をエリア別に紹介すると、下記の通りです。

地域 ワンルームタイプ ファミリータイプ
東京 城南 3.8% 3.8%
横浜 4.4% 4.4%
名古屋 4.5% 4.6%
大阪 4.4% 4.4%
福岡 4.6% 4.6%

出典:一般財団法人 日本不動産研究所「第 49 回 「不動産投資家調査」(2023 年 10 月現在)の調査結果」

ワンルームタイプもファミリータイプも、期待利回りは「3~5%」程度が相場であることが分かります。期待利回りは東京が最も低く、地方の大都市は比較的高い傾向にあります。

地域による利回りの違いは、物件価格が地域ごとに異なることが理由です。利回りの基本的な計算式は「年間の収益÷物件価格×100」であり、物件価格が高くなるほど利回りは低くなります。

同様に、物件が新築・中古のどちらであるかも利回りに影響する要素です。新築物件は物件価格が高額であり、利回りの計算式に当てはめると利回りが低くなります。対して、中古物件は物件価格が安価であり、利回りも高くなる点が特徴です。

アパート経営における利回りの最低ライン

アパート経営における実質利回りは3~5%程度が目安です。想定利回りはそれよりも少し高く、5~8%を目安としましょう。

また、利回りの目安はアパート経営を始めるときに土地を所有しているかどうかによっても異なります。

アパート経営を始めるにあたって「土地付きの物件を購入する場合」「自己所有の土地を活用する場合」のそれぞれについて、利回りの目安を解説します。

土地付きの物件を購入してアパート経営を始める場合

土地付きの物件を購入してアパート経営を始める場合、5~7%程度が表面利回りの目安です。

土地付きの物件を購入すると、建物の建築価格に土地の価格を加えた費用が物件価格となります。土地の価格分だけ物件価格が高くなり、結果として利回りは低くなるでしょう。

また、物件取得にアパートローン(不動産投資ローン)を活用した場合、ローン返済の期間中は利息の支払いがコストとして発生します。利息の負担分がそのまま利回りに影響するので、ローン返済期間中の利回りは2%未満となり、ローン完済後にようやく3~4%程度になるケースもあります。

自己所有の土地を活用してアパート経営を始める場合

自己所有の土地を活用してアパート経営を始める場合、7~10%程度が表面利回りの目安です。土地を購入する必要がない分、初期投資を抑えられるため利回りを高められます。

ただし、自己所有の土地の所在地や立地条件によって、実際の利回りが目安よりも低くなるケースもある点に注意してください。アパートは立地条件が重要であり、アパートに不向きな土地に建築しても、期待した家賃収入や利回りが得られない場合もあります。自己所有の土地で高利回りのアパート経営が期待できるのは、主要な駅の周辺や、利便性の高い商業施設、公共施設などが近隣にあるケースとなるでしょう。

また、自己所有の土地を活用する場合は、周辺で競合するアパート・マンションの家賃設定にも注意が必要です。地域の家賃相場が安い場合は、経営するアパートの家賃設定も引き下げなければ入居者が集まりにくく、結果として利回りも低下する可能性があります。

アパート経営の利回りを左右する要素は?

アパート経営の利回りは「地域性」「新築・中古のどちらか」「土地を所有しているかどうか」といったポイントの他にも、さまざまな要素によって左右されます。

以下では、アパート経営の利回りを左右する3つの要素を解説します。

アパートの初期費用

アパートの初期費用とは、物件取得にかかるさまざまな費用のことです。アパートの初期費用である「物件価格」「建築費」「物件取得時の諸経費」が多くかかると、当然のことですが投資金額が膨らむのでその分利回りの低下につながります。

アパートの初期費用の具体的な内容は、下記の通りです。

  • アパートの購入費用(建築工事費)
  • 土地購入費用(土地を購入する場合)
  • 地盤改良工事費用
  • 外構工事費用
  • 造成費用
  • 不動産会社の仲介手数料
  • 登記費用
  • 印紙税
  • 不動産取得税
  • 火災保険料
    など

初期費用の中でも特に大きな割合を占める項目が「アパート本体の購入費用」「土地購入費用」です。2つの項目が初期費用の70~80%を占めるため、アパート本体・土地購入費用が高くなると利回りに大きな影響を与えます。

アパート本体の購入費用を考える際は、アパートの構造や階数による価格の違いも把握することが重要です。アパートの構造は木造・軽量鉄骨造・鉄筋コンクリート造などがあり、建築費用は木造が最も安く、鉄筋コンクリート造が最も高くなります。もちろん階数は2階建てよりも3階建てのほうが価格が高くなります。

建築済みのアパートを購入する場合も、建築費用は購入価格に反映されます。アパートの構造・階層などは地域性なども考慮しつつ、高利回りとなるアパートの計画、もしくは物件選びをしていきましょう。

ランニングコスト

アパート経営のランニングコストとは、賃貸経営の期間中に継続して発生する経費支出のことです。利回りの計算式では「賃貸経営の諸経費」に該当し、ランニングコストが高くなると収益が減り利回りが低下します。

ランニングコストは表面利回りを計算する際には計算に含めませんが、アパート経営には必ずかかるため、ランニングコストを含めた実質利回りを確認することが大切です。

アパート経営で発生するランニングコストの内容は、下記の通りです。

  • 管理委託費
  • 火災保険料
  • 共用部分の管理費
  • 修繕費
  • リフォーム費用
  • 入居者募集の広告費
  • アパートローンの返済費用
  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 税理士費用
    など

ランニングコストを削減できると利回りの向上につながるものの、実際に削減できる項目は多くありません。ランニングコストの大部分は建物の維持管理や入居者管理にかかる必要経費であり、無理に削減すると物件価値の低下や入居者減少につながるためです。

ランニングコストを少しでも抑えたい場合は、「管理委託費」が適正価格の管理会社を選ぶとよいでしょう。実績のある管理会社は入居者管理もしっかりと行ってくれ、「入居者募集の広告費」も抑えられます。

他にもアパート購入時に支払う頭金の額を増やしたり、ローン金利を見直したりすると、「アパートローンの返済費用」を抑えられる可能性があります。

賃料やその他の収入

賃料やその他の収入は、アパート経営の収入源です。利回りの計算式では「年間家賃収入」に相当し、賃料やその他の収入の額が大きくなるほど、利回りは高くなります。

アパート経営における賃料やその他の収入は、主に下記の内容です。

  • 毎月の家賃収入
  • 管理費(共益費)
  • 駐車場料金
  • 礼金
  • 更新料
    など

中でも大きな割合を占める項目が「毎月の家賃収入」です。家賃収入はすべての入居者から毎月得られる収入であり、アパート経営の収益性を左右します。家賃収入が変化すると利回りにも大きな影響が出るため、家賃額の変動には注意しましょう。

また、賃料やその他の収入に含まれる項目は、いずれも入居者がいる場合にのみ発生することが特徴です。入居者が少ない場合は各種収入が減少して、利回りの大幅な低下につながります。

なお、賃貸借契約時に入居者から支払われるお金には、礼金のほかに「敷金」もあります。敷金はあくまでも入居者から預かる保証金であり、入居者の退去時に残金があれば返還する義務があり、アパート経営の収入には含まれません。

アパートの利回りを確認するときの注意点

アパート経営では利回りのチェックが重要であるものの、利回りのチェックではいくつかの注意点もあります。

アパート経営成功の可能性を高めるために、以下に挙げる6つのポイントに気をつけるとよいでしょう。

必ず実質利回りを確認する

アパートの利回りは、実質利回りを確認することが重要です。実質利回りは物件取得時の諸費用や賃貸経営の諸経費を含めて計算していて、実際のアパート経営時に近い利回りが分かります。

物件情報に記載されている利回り情報は、一般的に表面利回りや想定利回りです。表面利回り・想定利回りは物件間の収益性比較には使えるものの、計算式に各種コストが含まれておらず、実質的な利回りより高くなります。

表面利回りの高さだけで物件を選ぶと、コストの発生によって利回りが思ったほど伸びずに失敗する可能性もあるでしょう。

実質利回りを確認すれば、具体的な経営シミュレーションが行えます。対象物件の収益性を把握できて、自分の投資目的に合う物件かどうかを判断することが可能です。

実質利回りの確認方法としては、「自分で対象物件の情報と各種コストを調べて計算する」「投資サポート会社に相談する」といった選択肢があります。

修繕費を見積もっておく

アパート経営では建物や設備の修繕がたびたび発生し、ランニングコストとして修繕費が発生します。修繕の内容によっては高額な修繕費がかかるケースもあるため、物件購入前に修繕費を見積もっておきましょう。

修繕が必要になるタイミングは、主に下記の5つです。

  • 入居者の退去が決まったとき
  • 設備の入れ替えを行うとき
  • 内装の張り替えを行うとき
  • 外壁の修繕を行うとき
  • 間取りなどを変更するとき
  • 共用部のメンテナンスを行うとき
  • 各種塗装工事を行うとき
    など

入居者の退去が決まったときは、部屋の原状回復を行います。修繕費の目安は数万~20万円程度がかかるものの、原状回復費用は基本的に敷金から充当するのが一般的です。

「設備の入れ替えを行うとき」「内装の張り替えを行うとき」「外壁の修繕を行うとき」は、7~15年程度の間隔で行います。修繕費は修繕対象によって異なり、例としてエアコン交換は1台あたり5万~10万円程度、給湯器交換は1台あたり10万~20万円程度かかります。外壁補修や外壁塗装であれば100万円以上がかかるでしょう。

「間取りを変更するとき」は、主に空室対策を目的として行う修繕です。大規模な修理となるので、その分費用もかかります。

想定利回りが高い物件は理由を確認する

アパートの投資物件では、地域の相場よりも想定利回りが高い物件が見つかることがあります。想定利回りが高い物件には何らかの理由があるケースが大半のため、購入前に必ず理由を確認しましょう。

注意したい理由の例は、「物件の空室が多いにもかかわらず、想定利回りで表記している」というケースです。

想定利回りは満室経営を想定した利回りであり、空室が多い物件であっても高利回りに見せかけられます。空室が多いと家賃収入を増やせず、入居者募集の広告費などにコストがかかり、実際には想定利回りのような高利回りはなかなか実現できません。

ただし、想定利回りが高い物件の中にも、好条件の物件が隠れている可能性はあります。想定利回りが高い理由だけでなく、物件の現状や家賃・空室期間も確認すると、想定利回りが実現可能かどうかを判断できるでしょう。

空室率を計算に入れる

アパート経営の利回りを考えるときは、空室率を計算に入れることが重要です。

そもそも空室率とは、物件の部屋総数に対して、入居者がいない空室の数が占める割合を指します。基本的な計算式は下記の通りです。

基本的な空室率の計算式

空室率(%)=空室数÷物件の部屋総数×100

また、1年間でどの程度の空室が発生したかの割合を示す、稼働ベースの空室率もあります。

稼働ベースの空室率の計算式

稼働ベースの空室率(%)=(1年間で発生した空室数×空室の日数)÷(物件の部屋総数×365日)×100

利回り計算をする際は、基本的な空室率よりも稼働ベースの空室率で考えたほうがよいでしょう。

実質利回りの計算式に稼働ベースの空室率を加えて計算すると、実際の経営時に近い年間家賃収入を算出できます。

実質利回りと稼働ベースの空室率を組み合わせた計算式

実質利回り(%)=(年間家賃収入-賃貸経営の諸経費)÷(物件価格+物件取得時の諸経費)×(100-稼働ベースの空室率)

家賃の下落リスクを計算に入れる

アパート経営で入居者に支払ってもらう家賃は、年数を経るにつれて少しずつ下落します。長期的な視野で利回りを計算する場合は、家賃の下落リスクを計算に入れましょう。

家賃が下落する理由は、主に下記の2点です。

・建物の経年劣化による市場価値の低下

アパートは年数を経るごとに建物や設備などが劣化します。経年劣化した物件では、家賃を下げなければ入居者の募集・維持ができません。

・競合物件の増加

周辺に競合するアパート・マンションが建つと市場競争が激しくなり、入居者を集めるために家賃を下げることも考える必要があります。

家賃の下落率は、物件の築年数によって異なります。一般的には、築年数が10年を超えると家賃が下落しやすい傾向にあります。

金利の変化を考慮する

アパート経営の利回りでは、物件購入時に利用するアパートローンの金利変動リスクも考慮する必要があります。

そもそもローンの金利変動とは、市場金利の変化に伴ってローンの金利が変動することです。アパートローンの金利が変動すると返済費用も変化するため、利回りにも影響が及びます。

アパートローンを変動金利で借入した場合、金利が上昇すると毎月の返済額も増えることが金利変動リスクです。

金利の変化を考慮するには、「金利が上昇した場合」「金利が下落した場合」でそれぞれのシナリオを用意するとよいでしょう。アパートローンの返済額が金利変動を含めてどの程度の返済額になるかを把握すると、より具体的な利回りの計算ができます。

アパートの利回りを高く保つには?

アパートの利回りは経営期間中に常に一定であるとは限らず、空室の発生や家賃下落などの要因で利回りが下がる可能性があります。

しかし、アパートを建てるときの工夫や経営の仕方によって、利回りを高い水準に保つことも可能です。

アパートの利回りを高く保つためのコツを解説します。

ニーズに合った間取りのアパートにする

アパートの利回り低下につながる空室リスクは、部屋の間取りを入居者のニーズに合わせることで抑えられます。経営するアパートの入居者ターゲットを明確にして、入居者のニーズに合った間取りにしましょう。

入居者ターゲットを3つに分けて、それぞれのニーズに合う間取りを説明します。

ターゲットが単身者や学生の場合

ターゲットが単身者や学生の場合、居室1部屋のみの「1R」やキッチン付きの「1K」が人気です。1Rや1Kのアパートは家賃が安く、出費を抑えたい入居者を集められます。

居室と食事する部屋を分けたい単身者には、ダイニングキッチンになっている「1DK」もニーズの高い間取りです。

ターゲットがカップル・夫婦の場合

ターゲットがカップル・夫婦の場合は、「1DK」や居室が1部屋増えた「2DK」、リビングが付いている「1LDK」が人気の間取りです。

将来的に家族が増えることを想定するカップル・夫婦は、「2LDK」の部屋を選ぶ場合もあります。

ターゲットがファミリー層の場合
ターゲットがファミリー層の場合は「2LDK以上」の間取りがニーズに合います。特にリビングが広い間取りは、ファミリー層の入居者を集めやすいでしょう。

周りの賃貸物件と差別化する

アパートの空室リスク対策では、周りの賃貸物件との差別化も重要です。

物件自体に特別な魅力がないと、賃料の安さや間取りでしか入居者を集められません。より条件のよい物件が周辺地域に存在している場合は、入居者を集めにくい可能性もあります。

物件の差別化は、下記のような方法があります。

  • ペット可や楽器可にする
  • 家具や家電付きの物件にする
  • 特別な間取りを採用する(カウンターキッチンや書斎など)
  • 共用部に利便性が高い設備を導入する(ワークラウンジや共用ガーデンなど)

また、コンセプト賃貸にする方法もあります。

コンセプト賃貸とは、特定のテーマに沿ったデザインを建物に取り入れたり、居住環境・設備を導入したりといった賃貸物件のことです。「車好きの方をターゲットとしたインナーガレージ併設の物件」や「SOHO向けにインターネット設備を充実した物件」などが例として挙げられます。

コンセプト賃貸は、住まいに個性や趣味の実現を重視する入居者からの注目が高まっており、周りの賃貸物件との差別化もできる物件です。

複数のハウスメーカーを比較する

アパートを新築する場合、建築を依頼するハウスメーカーを選ぶ必要があります。

ハウスメーカー選びは建築費用で大きく差が出るポイントであり、複数のハウスメーカーを比較することが重要です。建物の品質は落とさず、建築費用を安く抑えられれば、アパート経営の利回りを高められます。

また、ハウスメーカーによって得意とする建物の構造や間取り、デザインなどにも違いがあることを考慮しましょう。ハウスメーカーが販売する商品の規格によっては、希望するアパートの構造や間取りを実現できない可能性があります。

複数のハウスメーカーを比較する際は、アパート建築の相見積りを取ることがおすすめです。相見積りを取るとハウスメーカーごとの建築費用や大まかな建築計画が比較でき、自分の経営プランに合うハウスメーカーを選べます。

管理方法を検討する

アパート経営では、下記の管理業務が発生します。

  • 入居者募集
  • 入居希望者の審査
  • 入居者のトラブル対応
  • 家賃回収
  • 契約更新
  • 建物や設備のメンテナンス、修繕依頼
    など

アパートの管理方法には、すべての管理業務を自分で行う「自主管理」と「管理会社への委託」があります。自主管理の場合、管理委託費が発生せず、利回りを高めることが可能です。

しかし、多岐にわたる管理業務は煩雑な作業であり、オーナーの負担になります。アパートの管理業務が滞ると空室リスクにもつながるため、実際には知識・ノウハウを持つ「管理会社への委託」がよく使われています。

管理会社を利用する方法で利回りを高めるには、管理委託費が適正な管理会社を選びましょう。管理委託費の相場は家賃の5%程度と言われており、相場から大きく逸脱しない管理会社を選ぶことが大切です。

リノベーション・リフォームを行う

アパートのリノベーション・リフォームは、空室リスクや家賃の下落を抑制する対策として活用する方法です。

築年数の古いアパートは建物や設備が劣化していて、間取りなども現在の入居者ニーズに合わなくなっています。築年数が経っていることで家賃も大きく下落していると、入居者がいたとしても利回りの低下は避けられません。

アパートのリノベーション・リフォームをすれば、建物の間取り・デザインなどを現在の入居者ニーズに合わせて変えられます。内装や外観が一新されることで物件の市場価値が高められて、下落した家賃もある程度は回復できるでしょう。

リノベーション・リフォームには、全面的な建て替えをするよりコストを抑えられるメリットもあります。

中古アパート経営で利回りを高めたい方や、経営していたアパートの空室率増加・家賃下落に悩んでいる方は、リノベーション・リフォームを検討してみてください。

利回り以外にも!アパート経営で気をつけたいポイント

アパート経営では、利回り以外にも気をつけるべきポイントがいくつかあります。利回りだけを考えていると失敗する可能性があるため、特にアパート経営初心者の方は注意してください。

最後に、アパート経営をするときに気をつけたい5つのポイントを解説します。

アパートの需要を確認する

アパートを購入する前には、土地にアパート・賃貸の需要があるかを確認しましょう。アパートの需要がない土地では入居者が集まりにくく、アパート経営をしても収益性が期待できません。

アパートの需要が高い土地には、下記のような特徴があります。

  • エリアの人口が多い
  • 徒歩圏内に駅がある
  • 土地が住宅街の中にある
  • スーパーなどの生活利便施設が周辺に存在している
  • 築年数が同程度のアパートが周辺に少ない

エリアの人口や駅の近さは、入居希望者の母数増加につながる重要なポイントです。他の特徴にも「住宅街は閑静で入居者人気が高い」「生活利便施設が近いと暮らしやすい」といった理由があります。

また、そもそもアパートを建てられる土地であるかの確認も大切です。例を挙げると、都市計画法で工業専用地域や市街化調整区域と定められたエリアでは、土地を購入してもアパートを建てられません。

アパートの建築が可能であり、かつアパートの需要がある土地を選びましょう。

自己資金を用意しておく

アパート経営を始める際は、ある程度まとまった額の自己資金を用意しておく必要があります。

自己資金が必要な2つの理由を紹介します。

・アパートローンの返済負担を抑えるため

アパート経営では物件購入にアパートローンを利用できるものの、購入費用の全額を融資してもらうと返済負担が大きくなります。頭金として自己資金を投入して借入額を少なくすれば、返済負担を小さく抑えることが可能です。

・アパート経営中の急な支出に対応するため

アパート経営中には空室の発生による収入減少や建物・設備のトラブル対応、金利上昇によるローン返済額の増額など、急な支出が発生することがあります。緊急用の資金として自己資金を用意していれば、急な支出にも余裕を持って対応できるでしょう。

アパート経営で必要な自己資金は、物件価格の1~3割が目安と言われています。物件購入前には収支シミュレーションを行い、無理のない金額で自己資金を用意することがおすすめです。

災害リスクに備えておく

アパート経営は10年以上の長期間にわたる資産運用であり、不動産の長期保有による災害リスクに備えておくことが重要です。

アパート経営で備えるべき災害リスクは、主に下記の内容が挙げられます。

  • 火災や落雷
  • 地震
  • 水害や土砂災害
  • 風災、雪災、雹災
  • 人的災害(自動車事故、空き巣の侵入など)

災害が発生した場合、アパートへの影響は災害の規模によって異なります。火災を例に挙げると、ボヤ程度であれば内装のリフォームで済むものの、被害がアパート半焼・全焼にもなれば建て替えが必要となるでしょう。

災害リスクへの備えとしては「火災保険・地震保険に加入する」「十分な自己資金を用意しておく」ことが挙げられます。

また、アパートを購入するときにはハザードマップを確認し、水害や土砂災害による被害が少ない土地を選ぶことも大切です。

キャッシュフローについての知識を身につけておく

キャッシュフローとは、収入・支出といった資金の出入りのことです。

また、不動産投資では家賃収入からローン返済や経費を支出した後の手元の資金繰りのことを「キャッシュフロー」と呼びます。

アパート経営では家賃収入からローン返済や経費支出までの資金が常に動いているため、キャッシュフローについての知識を身につけておきましょう。

キャッシュフローを考える際は、「いつ」「何が」「どのくらいの金額で」収入もしくは支出として発生するかを把握します。手元の資金はなるべく一定額を備えるようにしておき、不定期に発生する支出で、資金繰りがショートしないように注意してください。

アパート経営で健全なキャッシュフローを保つには、アパート経営開始時から長期の収支計画を立てておくことが重要です。収支計画は小まめに見直しを行って、現在のキャッシュフローに問題がないか、将来の経営に問題が発生しないかを確認します。

入居者トラブルへの対応策を考えておく

アパート経営では入居者トラブルと無縁でいることは難しく、さまざまな内容のトラブルが発生します。起こり得る入居者トラブルの性質を理解して、対応策を考えておくことが大切です。

主な入居者トラブルとしては下記の内容があります。

  • 騒音が周囲に響いている
  • タバコの煙が近所に流れている
  • ゴミ出しのマナーを守っていない
  • 洗濯機の水漏れが階下の部屋まで染みてしまった
  • 家賃入金の遅れや滞納がある
  • 部屋にゴミを溜めこんでいる
    など

騒音や喫煙などのトラブルは、入居者同士のいざこざに発展しかねないトラブルです。入居者同士のトラブルは物件の評判や入居者の退去に影響する要因であり、原因を突き止めて早急に解決する必要があります。

一方で、家賃滞納や部屋の使い方に関する問題は、オーナーと入居者の間で発生するトラブルです。まずはオーナー・入居者間のトラブルが発生しないよう努め、発生した場合に備えて管理会社や弁護士・専門家と相談できる体制も整えておくとよいでしょう。

 

まとめ

アパート経営における利回りは、アパートの収益性にかかわる指標になります。一言で利回りと言っても、表面利回りや実質利回りなどさまざまな種類があり、それぞれ算出方法が異なります。より現実に即した利回りを確認したい場合は、実質利回りを計算するようにしましょう。

利回りの目安は3~5%程度です。利回りが不自然に高いと感じる場合は、アパートに問題がないか確認することが大切です。アパート経営を始めるときは、収益性や必要な費用をきちんと見積もりましょう。

この記事の監修者

白坂大介

白坂 大介

保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士 | 宅地建物取引士 | 住宅ローンアドバイザー | 証券外務員1種

経歴

大阪市東淀川区 出身
上宮高等学校 卒業
京都産業大学 経営学部 卒業

2004年
ハウスメーカーへ入社
2008年
ファイナンシャルプランナー取得
2009年
総合保険代理店へ入社
2010年
FP Office Shirasaka 開業
2013年
ジョインコントラスト株式会社 設立
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