相続にまつわる17の用語を解説。遺贈・贈与は相続と違うの?計算式も紹介します
相続税は、住民税や固定資産税などの税金とは納付の形式が異なります。
いくら納めるか計算する際、たくさんの専門用語が出てくるので解読に時間がかかる、正しく申告できるか不安という方も多いかと思います。
本記事では、相続に関わる用語をできるだけ分かりやすく解説します。
目次
申告納税制度とは
納税者自身が所得や納付すべき税額を計算し、計算に基づく内容を申告・納付をする制度です。
昭和22年から相続税の他、所得税と法人税で採用されています。
個人の住民税や事業税、固定資産税、自動車税、不動産取得税、自動車税などは、賦課課税制度です。
賦課課税制度とは、行政機関が税額を決定する制度です。
相続税の計算に関係する用語
基礎控除
相続税の申告が必要になる基準となる金額です。
以下のように計算します。
法改正で、平成27年から控除額が引き下げられました。
法定相続人
民法で定められた相続する権利のある人です。
配偶者は常に相続人です。
配偶者以外で相続できる人と順位は以下の通りです。
第1順位 | 子ども
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第2順位 | 父母・祖父母など |
第3順位 | 兄弟姉妹
|
順位の上の人から相続します。
たとえば、第1順位の人がいなければ、配偶者と第2順位の人が相続できます。
ただし、相続を放棄した人と内縁関係の人は、法定相続人になりません。
法定相続分
遺言で相続分が指定されなかった時の分割基準です。
配偶者と子どもが相続人の場合 | 配偶者と父母・祖父母が相続人の場合 | 配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合 |
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遺贈
死後に財産を人・団体に無償で譲ることです。
法定相続人以外にも譲れます。
包括遺贈
財産の「全部」または「〇割」と示して譲ることです。
財産を受け取る人・団体は、遺産分割に加わるなど、相続人と同じ権利を持つことになります。
ただし、遺留分や代襲相続がない、相続放棄があっても相続できる割合は変わらないなどの違いはあります。
特定遺贈
特定の物・権利・金銭など指定した財産を譲ることです。
指定されない財産や遺言書に書かれていない債務は、受け継がれません。
遺留分
一部の相続人(遺留分権利者)が法律的に保障されている財産の取り分です。
遺留分権利者
遺留分をもらう権利を持つ相続人のことです。
該当するのは、父母、配偶者、子どもなどです。
兄弟姉妹は当てはまりません。
配偶者・子どもなど | 父母などのみの場合 |
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遺留分の計算の基となる財産の1/2 | 遺留分の計算の基となる財産の1/3 |
権利者が複数いる場合、受け取れる財産は法定相続分をかけた割合です。
たとえば、父母のみであれば、1/3×1/3=1/6となります。
総体的遺留分
遺留分権利者全体で受け取れる割合のことです。
上記の表の割合を指します。
個別的遺留分
総体的遺留分を権利者ひとりひとりに分配する時の割合のことです。
以下のように計算します。
代襲相続
相続人となる人が、相続前に亡くなっているなどで相続権を失った時、代わりに子どもが相続することです。
みなし相続財産
法律的には相続・遺贈されたものではないものの、相続した財産などと同程度の価値のあるものです。
下記のようなものが該当します。
- 生命保険金
- 退職手当金
- 生命保険契約に関する権利
- 定期金に関する権利
- 定期金に関する権利
- 農地
など
※みなし相続財産は、課税対象です。
生前贈与
亡くなる前に財産を渡すことです。
相続時精算課税制度を利用すれば、贈与税(個人から受け取った財産にかかる税金)は最大2,500万円までかかりません。
※贈与税は、生前に譲られた財産にかかります。
相続時精算課税制度
原則、60歳以上の父母・祖父母から20歳(令和4年4月1日以降の贈与からは18歳)以上の子・孫が生前贈与された時、相続時精算課税を選ぶか選ばないか決められる制度です。
相続時精算課税を選択しない場合、暦年課税で贈与税と相続税を計算します。
制度の利用には手続きが必要です。
最初に贈与された年の翌年の2月1日~3月15日(贈与税の申告書の提出期間)までに、子・孫が以下を納税地の所轄税務署に提出することが必要です。
- 贈与税の申告書
- 相続時精算課税選択届出書
- その他必要書類(戸籍謄本など)
相続時精算課税を選ぶと、暦年課税にすることはできません。
贈与税 | 相続税 |
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特別控除額2,500万円税額=2,500万円を超えた金額×20%
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暦年課税の贈与税と相続税は?
相続時精算課税を選ばない方の贈与税と相続税の求め方もまとめました。
贈与税 | 相続税 |
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基礎控除額:毎年110万円税額=(贈与された財産の価額-110万円)×贈与税の速算表で定められた税率-控除額
税率と控除額は、いくら贈与されたか、また、一般贈与財産か特例贈与財産かで異なります。 |
親などが亡くなる前に受け取った財産は、亡くなった時に相続・遺贈された財産の価額に加算されません。ただし、相続開始前3年以内に受け取った価額は、相続した財産の価額にプラスして税額を計算します。 |
一般贈与財産
特例贈与財産に当てはまらない財産、たとえば、兄弟間、夫婦間、親から未成年の子へ贈与するもの
基礎控除額後の課税額 | 200万円以下 | 300万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 |
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税率 | 10% | 15% | 20% | 30% |
控除額 | ナシ | 10万円 | 25万円 | 65万円 |
基礎控除額後の課税額 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 3,000万円超 |
---|---|---|---|---|
税率 | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
特例贈与財産
父母や祖父母から成人した子・孫へ贈与される財産
基礎控除額後の課税額 | 200万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 1,000万円以下 |
---|---|---|---|---|
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% |
控除額 | ナシ | 10万円 | 30万円 | 90万円 |
基礎控除額後の課税額 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 4,500万円以下 | 4,500万円超 |
---|---|---|---|---|
税率 | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | 190万円 | 265万円 | 415万円 | 640万円 |
相続時精算課税制度適用財産
相続時精算課税制度を利用して受け取る財産です。
受け取れる財産の種類に制限はありません。
制度を利用して受け取った財産は、みなし相続財産となります。
債務
財産を譲る人の借金などです。
相続税の課税価格の計算で、相続・遺贈される人が負担した場合、取得価格から控除されます。
以下が控除される債務です。
- 相続人・遺贈人が引き継いだ債務
- 相続開始時点で亡くなった人の債務と認められるもの
延滞税、加算税、墓の購入・管理費、宗教や学術など公益事業のための財産などは、控除されません。
相続手続きが煩雑な方は専門家へ任せる方法も
相続税をご自身で計算する場合、計算過程でなじみのない言葉が多く出てきます。
相続された財産が何に該当し、いくら控除されるかなどを知っているだけでも、納税額の計算の大変さが緩和されそうです。
本記事で相続税申告の助けになれば良いなと思います。
相続手続きが煩雑になりそうな方は専門家へ一任するのも一つの手です。