アパート経営は儲かるのか?収入・支出と経営を成功させる方法を解説
アパート経営は、賃貸収入を通じて安定した収益を得る可能性のある資産運用の1つです。多くの人々がアパート経営を行い収入を得ていますが、必ずしも儲かるわけではなく、成功するには知識や適切な備えが必要です。
当記事では、アパート経営の収入源や支出項目、経営に伴うリスクについて詳しく解説します。初めてアパート経営に挑戦する方や、現在経営を行っている方もぜひ当記事を参考にしてください。
目次
アパート経営は儲かる?
個人がアパート経営で家賃収入などを得た場合、儲けを不動産所得として申告し所得税を納税する必要があります。国税庁の公表データによると、2022年度に個人で不動産所得を得て、申告納税した人の不動産所得金額ごとの構成割合は、以下の通りです。
~100万円 | 5.3% |
---|---|
100万~200万円 | 18.9% |
200万~300万円 | 17.0% |
300万~500万円 | 24.0% |
500万~1,000万円 | 23.3% |
1.000万~2,000万円 | 8.7% |
2,000万~5,000万円 | 2.4% |
5,000万~1億円 | 0.3% |
1億円~ | 0.1% |
300万~500万円の不動産所得を得ている人がもっとも多いことから、アパート経営をはじめとする不動産投資は、まとまった収入を得られる可能性が高い資産活用手段と言えます。不動産所得を得て納税した人の1割以上は1,000万円以上の所得があるため、計画的にアパート経営を行えば、専業大家として生活できるほどの収入を狙うことも可能です。
ただし、不動産所得を得ている人のすべてがアパート経営を行なっているとは限りません。上記の表のデータは、大規模なマンション・一戸建て住宅・オフィスビルなどを賃貸して不動産所得を得ている人も含めた数字であることには注意しましょう。
アパート経営での収入
アパート経営の主な収入源は、家賃収入、共益費・管理費、礼金、更新料の4つです。それぞれの概要を以下で把握し、アパート経営の収支予測を行う際の基礎知識として役立ててください。
家賃収入
アパート経営で得られる収入の大半は、入居者が支払う家賃です。家賃収入には入居者がいる限り継続的に収入を見込めるメリットがあり、アパート経営の安定的な収入源です。アパート経営に挑戦する前に家賃収入を見積もりたい場合は、設定家賃に部屋数を掛けることで計算できます。家賃の相場は以下の要素によっても異なるため、適正かどうかを確認しながら設定しましょう。
- 立地
- 築年数
- 間取り
- 構造
- 設備
家賃が周囲の相場と比べて極端に高いと入居者が決まらず、想定通りの収入を得られないリスクがあります。入居者がまったくいない期間は家賃収入がゼロになり、赤字になる可能性もあるため、よく考えて設定家賃を決定しましょう。
共益費・管理費
アパートには、入居者が居住する「専用住居部分」と階段やエレベーターといった「共有部分」が存在します。共益費とは、共有部分の維持管理を行う目的で家賃とは別途、入居者から徴収するお金です。共益費は「管理費」などの名称で、入居者から徴収するケースもあります。
共益費の一般的な用途は、以下の通りです。
- 共用部分、屋外排水本管の清掃費用
- 共用部分にある蛍光灯の取り替え費用
- 敷地内にある花壇や植木の手入れ費用
共益費の計算方法に明確なルールはありませんが、共有設備の維持管理費用と徴収する共益費のバランスを取るようにしましょう。大まかな目安としては、家賃の5~10%程度に設定を行うことが相場です。
礼金
アパートを貸す際には、入居者と賃貸借契約を締結します。礼金とは賃貸借契約を締結する際、大家が受け取る謝礼金です。物件が不足していた時代には、礼金に「謝礼金を支払うため、自分に部屋を貸してほしい」といった意味合いが込められていました。近年でも過去の風習を引き継ぎ、礼金を受け取ることは多くあります。
礼金の金額の決め方に明確なルールはないものの、家賃の1~2か月分程度が相場です。入居者側からの視点で見れば「初期費用を支払ったため、一定期間は居住しよう」との意識につながるので、礼金は早期の退去を抑制する対策として機能します。
賃貸借契約を締結する際には礼金の他、敷金を受け取るケースもあるものの、礼金と敷金は異なる性質を持つ金銭です。敷金は入居者が担保として支払う金銭にあたり、退去までにトラブルがなかった場合は返金する義務があることから、アパートの経営の収入には入りません。
更新料
アパート経営では多くの場合「2年」などの契約期間を設定し、賃貸借契約を締結します。更新料とは、入居者が賃貸借契約の更新を希望する場合、大家に支払うお金です。更新料の金額の決め方にも明確なルールはなく、原則的には大家が自由に設定できます。
ただし、地域によっては更新料を徴収する慣習がないこともあるため、事前に確認しておくと安心でしょう。更新料を徴収する地域では、家賃の0.5~1か月分程度を受け取ることが相場です。
もちろん、更新料の慣習がある地域においても大家の判断によって、更新料をゼロにできます。更新料をゼロにすると一時収入が減少する反面、更新のタイミングでの退去を抑制することが可能です。
退去が発生した場合には次の入居者が見つかるまでの期間、その物件からの家賃収入を得られません。長期的にアパート経営の収入を安定させたい場合は、更新料をあえて徴収しない方法を検討してもよいでしょう。
アパート経営にかかる支出
アパート経営を成功させるためには、毎年もしくは定期的に発生する支出を正しく見積もり、計画的な資金準備を行うことも必要です。以下では、アパート経営で発生するさまざまな経費や税金について紹介します。
修繕費用
修繕費用とは、適切なメンテナンスによってアパートの収益性を維持向上させるための支出です。修繕費用には以下の種類があり、支出のタイミングや金額の目安が異なります。
概要 | 目安金額 | |
---|---|---|
原状回復 | 退去が発生した際、専用住居部分を元の状態に戻すための費用 | 数万~20万円程度 |
補修 | 不具合が生じた設備や突発的な事故・災害による破損を修理するための費用 | 数万~数十万円程度 |
大規模修繕 | 建物の劣化防止や機能維持を図るため、定期的に実施する大規模なメンテナンスにかかる費用 | 数百万~1千万円程度 |
予防修繕 | シロアリ対策、屋根・外壁の劣化調査、設備点検といった予防的なメンテナンスにかかる費用 | 数万~数十万円程度 |
大規模修繕にかかる金額は工事箇所や物件規模によって異なるものの、費用が高額になりやすい傾向にあります。アパート経営1年目から大規模修繕に備えて、計画的な資金準備を行いましょう。
管理費用
アパート経営では、入居者の募集・契約更新対応・建物管理・退去の立ち会いなどのようにさまざまな管理業務が発生します。管理費用とは、管理業務を適切に実施するために発生する費用です。管理費用には多くの場合、以下の費用を含みます。
- 定期清掃費
- メンテナンス(建物維持管理)費用
- 共用部分の光熱費
- 賃貸管理会社への管理委託料
管理委託料とは、管理業務の一部を管理会社に委託する場合の料金です。管理会社に委託できる業務の内容は業者によって異なるものの、多くの場合は、以下に対応してくれます。
- 鍵の管理
- 入居者のクレーム対応
- 家賃の集金代行
- 賃貸借契約の更新手続き
- 敷金の精算
- 原状回復工事の見積もり
管理会社に支払う管理委託料は、家賃の5%程度が相場です。委託する業務の内容を「家賃の集金代行のみ」などに限定すると管理委託料を節約できる反面、大家の負担は大きくなります。
保険料
自然災害などの理由でアパート自体が被害を受けた場合、大家の加入する火災保険で補償を受ける必要があります。火災保険に加入する場合はアパート経営の必要経費として、火災保険料を支払うことが必要です。
火災保険料の金額は、物件の所在地・建物の構造・特約補償内容・築年数などに応じて異なります。プランの選択に迷う場合は、複数社の損害保険を取り扱っている保険代理店にアドバイスを受けましょう。
また、火災保険では、地震が原因で発生したアパートの損壊・火災に対する補償は受けられません。地震の発生リスクに備えたい場合は火災保険と併せて地震保険に加入しましょう。
所得税・住民税
アパート経営で不動産所得を得た場合は原則的に確定申告を行い、所得税や住民税を支払うことが必要です。不動産所得は、以下の式で計算できます。
不動産所得=総収入金額−必要経費
ただし、会社員の場合、給与所得以外の所得が20万円以下であれば確定申告は不要です。つまり、アパート経営以外の副業がない人の場合、不動産所得が20万円以下の年には確定申告を行わなくても問題はありません。
固定資産税
固定資産税とは、毎年1月1日時点において固定資産を所有する人に課される税金です。土地やアパートも固定資産に含まれるため、アパート経営を行う際には毎年、固定資産税を支払う必要があります。
固定資産税の計算式は、以下の通りです。
固定資産税=課税標準額×1.4%(※)
※市町村によっては、1.4%以外の税率が適用される可能性もあります。
固定資産税の支払い義務がある人には市町村から毎年、納税通知書が送付されます。納税通知書に記載された納期を守り、固定資産税の支払いを行ってください。
出典:総務省「固定資産税」
仲介手数料
仲介会社に入居者の募集を依頼し、賃貸借契約が成立した際には多くの場合、仲介手数料の支払いが必要です。大家が仲介会社に支払う仲介手数料の金額は、「家賃の1か月分×0.5+消費税」が上限と規定されています。
ただし、物件の状態や立地によっては「広告費」などの名目で、仲介手数料とは別の謝礼を仲介会社に渡すことも少なくはありません。たとえば、競合物件が多い地域でアパート経営を行う場合には仲介会社に積極的な入居者募集を行ってもらうため、広告費の支払いが必要になる可能性もあります。
アパート経営が儲からないと言われる理由は?
アパート経営に興味はあっても「儲からない」「おすすめしない」などの意見が気になり、二の足を踏む人もいるでしょう。実際、アパート経営を成功させるためにはいくつかのコツがあり、「必ず儲かる投資」とは言えません。「アパート経営は儲かるのか」が気になる人は以下の事情を理解した上、自分自身に合う投資かを検討しましょう。
入居者を維持するのが難しいため
日本では多くの地域で少子高齢化や人口減少が進行し、アパート経営のターゲットとなる人が減少している状況です。「新築」であること以外に競争優位性のないアパートは入居者を維持・確保しにくく、空室率が高くなるリスクもあります。
空室率が当初の想定以上に高くなると、家賃収入が減ってしまいます。空室を回避する目的で想定家賃よりも安く、入居者を確保した場合も同様です。
アパート経営で入居者を維持・確保することが簡単ではないとは言え、新築でなくても満室経営を実現できている物件は、少なからず存在します。これからアパート経営に挑戦する場合は以下の対策を実施すると、物件の競争力強化を図れます。
- 入居者に需要が高い設備を導入する
- 共有部分を清潔に維持する
- 物件広告の内容を充実させる
宅配ボックス、無料インターネットなどのように入居者が喜ぶ設備を充実させると、周囲の物件との差別化を図れます。また、入居希望者が内見する際の印象を良くするために、エントランスやエレベーター周辺を清潔に維持しましょう。
アパートを建てる際にローンが必要になるため
アパート経営では多くの場合、自己資金とアパートローンによる借入金を併用して、土地の取得費用や建築費用を確保します。アパートローンとは、資金使途が賃貸住宅の建築費やリフォーム費用に限定されているローンです。アパートローンで多額の借入を行った場合、毎月の金利負担によって収支が悪化し、「儲からない」と感じるリスクもあります。
アパートローンの返済期間を長くすれば、毎月の返済負担の軽減が可能です。しかし、返済期間が長いほど総返済額が多くなり、最終的に手元に残るお金が減るケースもあることには注意しましょう。
アパート経営に知識が必要なため
アパート経営で儲けるためには、不動産分野の専門知識が不可欠です。アパート経営の初心者が十分な予備知識を持たずに挑戦すると赤字化しやすく、「儲からない」と感じてしまう傾向があります。
不動産分野の知識不足を補うには、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。アパート経営に関する相談は、以下の場所で行えます。
- 不動産会社(管理会社、仲介会社)
- 建築会社、ハウスメーカー
- 金融機関
- 税理士、公認会計士
上記のいずれに相談すべきかは、受けたいサポートの内容に応じて変化します。たとえば、所有する土地がアパート経営に適しているかを知りたい場合は、不動産会社や建築会社に相談するとよいでしょう。
黒字化までに時間がかかるため
アパート経営を開始する際には、多額の自己資金を投入します。アパート経営の黒字化(投入した自己資金を超える累積キャッシュフローを得ること)までには、10~20年程度かかるのが一般的です。「早期の黒字化」を重視する人にとって元本回収に時間がかかるアパート経営は、「儲かる投資」と言えません。
アパート経営の黒字化までにかかる期間を知りたい場合には、収支計画書を作成しましょう。収支計画書とは、アパート経営の収支見込みを1年単位でシミュレーションした計画書です。収支計画書の中から毎年の手取り収入とアパートローンの債務残高を抜粋し、グラフ化すると、黒字化までにかかる期間の目安を把握できます。
アパート経営で備えておきたいリスク
アパート経営には、空室リスク・修繕リスク・家賃低下リスクといったさまざまなリスクが付き物です。アパート経営に伴うリスクの概要を事前に理解して十分な対策を取り、儲かる投資を目指しましょう。
空室リスク
空室リスクとは、所有するアパートに空室が発生し、見込んでいた家賃収入を得られなくなるリスクです。以下は、アパートの空室リスクを高める主な要素を示します。
- 周辺地域の人口減少
- 競合物件の増加
- 経年劣化による魅力の低下
- 仲介会社との連携不足
保有する土地周辺の人口が減少している場合には空室リスクが高まるものの、工夫次第でアパート経営を成功させられるケースもあります。たとえば、土地周辺に外国人労働者を受け入れている工場がある場合は、入居者を外国人に限定してアパート経営を行えば、空室を回避できる可能性があります。
アパートの空室リスクを軽減するには、仲介会社の協力も欠かせません。仲介会社とは日頃からコミュニケーションを取り、退去が発生したときにスムーズに行動してもらえる体制を整備しましょう。
修繕リスク
修繕リスクとは建物や設備の劣化や損傷に伴い、メンテナンスが発生するリスクです。修繕リスクを想定して必要費用を積み立てないと、資産価値の低下につながる恐れもあります。
国土交通省の計画修繕ガイドブックによると、アパートの主要な部位で修繕が発生するタイミングの目安は、以下の通りです。
屋根 | 塗装・補修:11~15年目 防水・葺替:21~25年目 |
---|---|
給湯器・エアコン | 交換:11~15年目 |
階段・廊下 | 鉄部・塗装:4~10年目 塗装・防水:11~15年目 |
外壁 | 塗装:11~15年目 タイル張り:12~18年目 |
給排水管 | 高圧洗浄:5年目 取替:30年目 |
アパート経営を行う上ではさまざまな場所の定期的なメンテナンスを避けられず、修繕リスクをゼロにすることはできません。メンテナンスは必ず発生するものとして計画的に資金を準備し、アパート経営の赤字化を回避しましょう。
入居者トラブルのリスク
アパート経営では生活習慣や考え方の異なる多くの人と賃貸借契約を締結するため、以下の入居者トラブルが発生するケースもあります。
- 騒音、悪臭
- ゴミ出しのマナー違反
- (ペット不可物件での)ペットの飼育
- (禁煙物件での)喫煙
- 無断の転貸
入居者トラブルの発生リスクを極力軽減するためには、十分な入居審査を行う・連帯保証人を確保するなどの対策を取りましょう。賃貸借契約を締結する際に規約違反があった場合の対応を明確に説明する対策によっても、入居者トラブルを抑止できる可能性があります。
家賃低下リスク
家賃低下リスクとは、物件の経年劣化や競合物件の増加により、設定家賃を下げないと入居者を探しにくくなるリスクです。設定家賃は主に空室が発生し、次の入居者を募集するタイミングで変更することがほとんどです。
物件の利回り低下を防止するには共有部分の管理やクレーム対応を丁寧に行い、現在の入居者の退去を回避する対策を取ることが一案です。これからアパート経営に挑戦する場合には、賃貸需要の高い場所にある物件を取得すると、家賃低下リスクの軽減を図れます。
ただし、どれほど念入りな対策を行っても、家賃低下リスクを完璧に回避することは不可能です。アパート経営の失敗を回避するには家賃低下を見込んで収支をシミュレーションし、投資判断を行いましょう。
家賃滞納リスク
所有するアパートで家賃滞納が発生した際には、以下の対処を取る必要があります。
1 | 管理会社に督促を依頼 |
---|---|
2 | 管理会社から連帯保証人に連絡 |
3 | 内容証明郵便による督促を依頼 |
4 | 任意による明渡し請求を実行 |
5 | 法的手続きを実行 |
督促とは、電話や文書によって滞納家賃の自主的な支払いを促すことです。入居者が督促に応じてくれない場合には管理会社に依頼し、連帯保証人へ連絡します。
連帯保証人に連絡しても入居者が支払いに応じない場合は督促の記録を残すため、内容証明郵便を発送してもらいます。任意による明け渡し請求とは、滞納家賃の全額もしくは一部免除などの条件を提示し、退去を依頼することです。
家賃滞納の直接的な対応は基本的に管理会社に依頼するとは言え、問題が解決するまでの期間、家賃収入を得られません。法的手続きを実行する際には、高額な弁護士費用が発生する可能性もあります。
家賃滞納リスクに対する備えとしては、保証会社を利用してもらう方法が一案です。保証会社を利用すると滞納が発生した際に立て替え払いを受けられ、大家側の損失を最小限に抑えられます。
災害リスク
アパート経営は長期スパンで行う投資であるため、物件の運用中に火事・地震・水害などが発生し、被害を受けるリスクもあります。自然災害や火事の発生に備えるために、必要な補償を適切に見積もり、火災保険や地震保険に加入しましょう。火災保険に水災補償を付帯すると、集中豪雨や土砂災害による建物被害にも備えられます。
アパート経営で儲けるための方法
アパート経営で儲けるためには、物件を建築する前の段階からさまざまな工夫を行う必要があります。具体的には以下の点に注意して計画的に行動し、アパート経営を成功させましょう。
需要に合ったアパートを建てる
安定的なアパート経営を目指すためには、賃貸需要の見込まれる土地にターゲット層に応じた間取り・設備を備えた物件を建築しましょう。所有する土地でアパート経営に挑戦したい場合は事前に現地を訪問して以下の点をチェックし、街自体の将来性を確認します。
- 交通の利便性
- 周辺の人口構成
- 中核企業の多さ
- 商業施設の充実度
一定の賃貸需要が見込まれる場合は人口構成や周辺環境をもとに、ターゲットを明確化します。ターゲットを明確化した後にはライフスタイルを具体的に想像し、ターゲット層のニーズに合った間取りや設備を検討しましょう。
たとえば、20~30代の単身者をターゲットにアパート経営する場合、1DKや1LDKの間取りを選択するとよいでしょう。大型スーパーや公園に近く、ファミリー層の賃貸需要が見込まれる土地では、2LDKや3LDKの間取りが適切です。
建築会社を比較検討する
アパート経営を成功させるには、建築会社の協力も欠かせません。建築会社によって得意分野は異なることから複数社の見積もりを取り、比較検討した上で、契約先を決定しましょう。
複数社の見積もりを比較検討する際には以下の点に注目すると、失敗リスクを軽減できます。
- アパート建築の実績
- 地域事情の精通度
- 収支計画書の信頼度
- 提携金融機関の有無
- 建築後のサポート体制
実績が豊富な建築会社は需要の高い物件の特徴を熟知していることから、信頼度は高いと言えます。土地の特徴を踏まえた建築プランの提案を受けるには、地域事情に精通した担当者のいる建築会社を選択すると安心です。
中には、実現性の低い楽観的なシミュレーションで収支計画書を作成し、見積もりを提示する建築会社も存在します。提示された収支計画書に家賃の低下リスクや修繕リスクが盛り込まれていない場合、建築会社の信頼度を疑いましょう。
収支計画をきちんと立てる
さまざまなリスクを考慮してもアパート経営がうまくいくかを検証するには、以下の手順に沿い、正確性の高い収支計画書を作成しましょう。
1 | アパート経営の収入を項目別に算出する |
---|---|
2 | アパートローンの借入額を検討し、毎年の返済額目安を算出する |
3 | 返済額以外の支出を項目別に算出する |
4 | 年単位で収支を計算し、表形式にまとめる |
家賃収入の項目は空室リスクや家賃低下リスクを考慮し、現実的な数字を入力しましょう。支出には日々の修繕・メンテナンス費用とは別途、大規模修繕に向けて用意する「修繕積立金」の項目を用意して、適正額を積み立てます。
修繕費を積み立てる
国土交通省の計画修繕ガイドブックによると、賃貸住宅でかかる1戸あたりの修繕費の目安は、以下の通りです。
RC造20戸(1LDK~2DK) | RC造10戸(1K) | 木造10戸(1LDK~2DK) | 木造10戸(1K) | |
---|---|---|---|---|
5~10年目 | 約9万円 | 約7万円 | 約9万円 | 約7万円 |
11~15年目 | 約55万円 | 約46万円 | 約64万円 | 約52万円 |
16~20年目 | 約23万円 | 約18万円 | 約23万円 | 約18万円 |
21~25年目 | 約116万円 | 約90万円 | 約98万円 | 約80万円 |
26~30年目 | 約23万円 | 約18万円 | 約23万円 | 約18万円 |
合計 | 約225万円 | 約177万万 | 約216万円 | 約174万円 |
RC造20戸のアパートでは30年間で1戸あたり約225万円、建物全体では約4,490万円もの修繕費がかかります。大まかな目安としては家賃収入の5%程度を修繕積立金に回し、資金準備を行いましょう。
管理会社を比較検討する
管理会社は、物件の維持管理や入居者のトラブル対応窓口を担当してくれる重要なパートナーです。以下の視点で管理会社を比較・検討し、信頼できる相手と契約しましょう。
- 担当者との相性は良いか
- 管理委託料が適正か
- アパート周辺に拠点はあるか
- 客付け力が高いか
質の高い賃貸管理を行うためには、一定の手間とコストが必要です。管理委託料が極端に安い管理会社と契約すると十分なサービスを受けられないリスクがあるため、注意しましょう。
多くの管理会社では物件ごとに担当者が付き、大家のサポートを行います。担当者との相性が悪いとアパート経営に支障が生じるケースもあることから、事前の確認が必要です。
管理会社の客付け力をチェックするためには、管理物件の入居率を質問します。管理物件の入居率が95%程度以上であれば、大きな問題はないでしょう。
まとめ
アパート経営は、正しい知識を持って計画的な資金管理を行えば、安定した収益を得ることができる魅力的な資産運用方法です。しかし、空室リスクや修繕リスク、災害リスクなどさまざまな事態に備え、リスクを適切に管理しなければなりません。
アパート経営で儲けるためには、需要に合った物件を建築し、信頼できる建築会社や管理会社を選ぶことが重要です。アパートの建築段階から相談したい場合は、アパート建築会社に一度相談してみるのがおすすめです。
この記事の監修者
白坂 大介
保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士 | 宅地建物取引士 | 住宅ローンアドバイザー | 証券外務員1種
経歴
大阪市東淀川区 出身
上宮高等学校 卒業
京都産業大学 経営学部 卒業
- 2004年
- ハウスメーカーへ入社
- 2008年
- ファイナンシャルプランナー取得
- 2009年
- 総合保険代理店へ入社
- 2010年
- FP Office Shirasaka 開業
- 2013年
- ジョインコントラスト株式会社 設立