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アパートはどのように建てる?流れや費用・検討事項も解説

 
アパートはどのように建てる?流れや費用・検討事項も解説
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土地の活用方法として、アパート経営に向けてアパートを建てようかと検討している方もいるでしょう。アパート建築には長い期間がかかるため、計画的に準備を進め、資金の調達方法も考える必要があります。

当記事では、アパートを建てるときの具体的な流れとともに必要な費用、検討事項について解説します。アパート建築において長期間のパートナーとなる建築会社の選び方も合わせて解説するので、アパート経営を成功させたい方はぜひご覧ください。

アパートを建てるときの流れ

新築アパートでの賃貸住宅経営を成功に導くためには、アパートを建てる際の流れやアパート建設に必要となる期間を把握しておくことが大切です。一般的には、アパート建築の計画立案から完成まで1年~1年半程度かかります。

ここでは、アパートを建てるときの流れについて詳しく解説します。アパート建築をスムーズに行うためにも、各段階における重要ポイントや取り組むべき内容を確認しておきましょう。

立地の調査をする

アパートにおける立地調査とは、賃貸アパートを建てようとしている敷地や土地活用を検討している敷地が、アパートの建築に適している土地かどうかを調べることを指します。次の3種類の調査を行った上で、安全性と競争力の高い土地を選びましょう。

◆アパートの立地調査

周辺環境の調査 周辺地域の賃貸ニーズや家賃相場、世帯のニーズなどを確認します。最寄駅や近隣の小中学校、商業施設、医療機関へのアクセスなど生活する上での利便性もチェックしておきましょう。
敷地調査 敷地を測量し、土地の正確な面積や形状を確認する調査です。「ライフラインの配管があるか」「建ぺい率や容積率といった基準はどの程度か」なども併せて確認します。
地盤調査 アパートを建てる土地の強度を調べるための調査です。地盤の構成や強度、土質、地下水位、液状化判定などの調査結果によっては、地盤改良工事が必要となるケースもあります。

資金計画を立てる

アパートを建築するためには、少額とは言えない金額の資金が必要になります。アパート建築の資金を調達する方法には、主に「自己資金」と「アパートローン」があります。不動産投資用のアパートを建築する場合は「住宅ローン」は利用できません。

金融機関や商品によってローンの金利が異なる点にも注意が必要です。それぞれのメリット・デメリットを考慮した上で、自身の状況に適したローンを選ぶようにしましょう。不動産投資に強いファイナンシャルプランナー、税理士や金融機関などと相談しながら資金計画を立てることもおすすめです。

建築会社を決める

アパートを建築するための立地調査や資金計画の作成が完了したら、アパートの建築を依頼する建築会社を決めましょう。

アパートの建築工事を行う業者には、主に「ハウスメーカー」「工務店」「設計事務所」「デベロッパー」などがあります。建築会社によって使用する工法や建築資材、得意とする技術、建築費用なども異なるため、それぞれの特徴をふまえた上で、自分に合った建築会社を選ぶようにしましょう。

建築プランを決める

建築工事を依頼する業者が決まったら、どのようなアパートを建てるのか具体的な計画を立て始めましょう。アパート建築プランの作成には「基本設計」と「実施設計」の2段階があり、それぞれの段階で決定する内容が異なることに注意してください。

◆建築プランの作成

基本設計 敷地の条件や周辺のニーズをふまえて、アパートの規模や住戸数、基本的な間取りや部屋数、階数などを確定します。設備や外装・内装、外構の内容を決める際には、要望とともに予算をしっかり伝えるようにしましょう。
実施設計 行政機関からアパートの建築許可を得るために、より詳細な建築プランを作成する作業です。基本設計をもとに構造計算や設備図の作成を行い、実際に施工可能なレベルの詳細な図面をつくります。

基本設計の段階では概算見積もりを、実施設計の段階では詳細見積もりを確認できます。設計と施工を別の業者に依頼する場合は、基本設計・実施設計を行った後に施工会社を選定し依頼するようにしましょう。

着工の準備をする

依頼する建築会社や建築プランが決まり、工事請負契約を締結したら、いよいよ着工の準備に入ります。着工までに次の4点を済ませておきましょう。

◆アパート建築の着工までにオーナーが行うこと

・建築確認申請・建築工事届の提出

必要な書類を提出しましょう。まず、建築確認申請を提出し、必要な審査を受けます。審査後に発行される「確認済証」を入手したら、建築工事届と併せて都道府県知事あてに提出してください。これらの手続きを経てアパートの着工が可能となります。ただし、これらの業務は一般的に建築会社や設計事務所がオーナーに代わって行います。

・アパートローン契約(金銭消費貸借契約)を済ませる

工事請負契約を締結した後にアパートローンを借りる金融機関と「金銭消費貸借契約」を締結し、融資を確定します。

・地鎮祭を行う

土地の神様を鎮めて関係者が安全に工事できるよう祈願するための儀式です。建築会社のアドバイスに基づいて準備を進めましょう。

・近隣住民への挨拶を行う

建設重機の出入りや工事による騒音などにより、近隣住民に迷惑がかかることもあります。現場責任者である工事監督と共にオーナーも一緒に近隣へご挨拶にまわることが望ましいです。挨拶時には、建物の概要や工事の日程を説明するようにしましょう。

入居者を募集する

アパートの建築工事が始まったら、入居者募集をスタートさせます。アパートの規模にもよりますが、工事の開始からアパートの完成までには6か月程度の期間が必要です。この期間中に入居者を募集し、竣工と同時に入居してくれる方を確保することで、空室期間が減り収益をスムーズに得られるでしょう。

不動産仲介業者を利用して入居者を募集する場合には、入居者からも安心してもらえる仲介業者を選ぶことがポイントです。オンライン接客やオンライン内見など、インターネットを活用した集客も積極的に行っている仲介業者を中心に検討し信頼のおける業者に依頼しましょう。

アパートが完成し引き渡される

アパートの建築工事が完了したら、工事完了の4日以内に「工事完了届」を建築主事に提出し、建築物の完了検査を受けましょう。完了検査で適法であると確認され「検査済証」が交付されるまでの期間は、アパートを使用できません。

また、アパートが完成したら、建築会社からアパートが引き渡されます。工事の最終確認として、オーナーと建築会社の責任者による「立会い検査」が行われるため、手直しの必要がないか細かいところまで確認しましょう。手直しする必要がある場合は、手直し工事を建築会社に依頼してください。

アパート建築に必要な費用

アパート建築費は、アパートの規模や建築会社、地域、使用する設備などによっても異なりますが、構造によっても相場が異なります。

◆建築費用の平均値(構造別・全国)

構造 建築費用の平均値
(1㎡当たり)
建築費用の平均値
(1坪当たり)
木造 177,000円 584,100円
鉄骨鉄筋コンクリート造 265,000円 874,500円
鉄筋コンクリート造 278,000円 917,400円
鉄骨造 272,000円 897,600円

出典:国税庁「地域別・構造別の工事費用表(1㎡当たり)【令和5年分用】」

国税庁が算出する建築費の平均は表の通りですが、実際にアパートを建てるときの相場は上記の倍程度になることが一般的です。

アパートの建築費は、主に「本体工事費」「付帯工事費」「諸費用」の3つに分けることができます。ここでは、これらの内訳に該当する費用項目や相場について確認しましょう。

本体工事費

本体工事費には、アパートの本体部分(基礎部分・躯体・外装・内装・トイレ・浴室など)を構成する工事費および資材費が該当します。本体工事費は、建築費用の6割程度となることが一般的です。

なお、建築会社によって内訳が異なるため、見積もりや明細書などをよく確認し、不明な点があれば建築会社に問い合わせましょう。

付帯工事費

付帯工事費には、アパートの本体部分とは別に必要な工事にかかる費用が該当します。

◆付帯工事費に該当する費用(例)

  • ライフライン(電気・水道・ガス)の整備費用
  • 外構(駐車場・門扉・門柱・生垣)の設置・整備費用
  • 地盤改良工事の費用
  • 造成費用
  • 仮設工事費用(足場や仮設トイレの設置、交通整理など)

建築するアパートのタイプや土地の状態、周辺環境にもよりますが、付帯工事費は建築費用の3割程度となるケースが多いでしょう。

諸費用

アパートを建築する際には、工事に必要な費用以外にもさまざまな費用がかかり、上記の工事とは別で必要となるケースもあります。ある程度まとまった金額が必要となるため、代表的な諸費用について事前に確認し、資金を準備しておくようにしましょう。

◆代表的な諸費用

測量費 アパート設計の際に、敷地の正確な面積や方角や高低差を把握するために行う測量に必要な費用です。30万~40万円程度の費用が発生します。
地盤調査費 アパートを支える地盤の強度を調べるための費用です。地盤は建物を建築する上で最も重要な部分になるため、新築住宅を建てるときに地盤調査は必ず行います。費用は5万~10万円程度必要です。
設計料(設計費)

アパートの設計士に対して支払う費用です。設計料はアパートの延べ床面積に基づいて決定されることが一般的であり、建築費用の5~15%程度が目安となります。

なお、設計と施工をまとめて行うハウスメーカーの場合、設計料は建築費用に含まれるケースがほとんどです。建築費用の3~5%を目安とするとよいでしょう。いずれも業者によってさまざまです。

印紙代 工事請負契約を締結する際に必要な印紙にかかる費用です。工事費用に応じて印紙の税額が異なるため、必ず確認しておきましょう。
水道分担金 水道の引き込みに必要なメーター新設費用であり、各自治体の水道局に支払います。アパートの戸数が多くなるほどメーター口数が増えるため、水道分担金も高くなることに注意しましょう。戸数に応じて100万~500万円ほど必要になることもあります。
登記費用

土地を購入した場合、所有権移転登記を行う必要があります。またアパートの新築にあたっても表示登記や保存登記などが必要になります。さらに融資を利用する場合には抵当権設定登記も必要になります。これら登記の際には登録免許税などの登記費用がかかります。

  • 新築建物登録免許税…固定資産税評価額×0.4%
  • 抵当権設定登記費用…債権金額×0.4%(ローンを組んだ場合)
保険料 火災保険や地震保険などの保険料を指します。保険料を毎年支払う方法もありますが、5年などの長期契約を結ぶほうが割安になる傾向があるため、長期契約も検討しましょう。
税金 新築アパートを取得した際には、不動産取得税を納める必要があります。不動産取得税の納付額は「固定資産税評価額×0.3%」となります。
司法書士手数料 所有権移転登記、所有権保存登記、抵当権設定登記などの登記手続きを司法書士に依頼する場合に、司法書士への報酬として支払う費用です。10万~20万円程度を目安として考えておきましょう。

アパートを建てるメリット

アパート建築にはローンを含めた多額の資金や複数の手続きが必要になるため、アパート経営に不安を感じている方もいるのではないでしょうか。確かに資金や手続きは必要ですが、アパートを建てることには大きなメリットもあります。

ここでは、アパート経営を始めることで得られる主なメリットを2つ紹介します。メリットを確認した上で、アパート経営に前向きに取り組みましょう。

安定した収入を得られる

アパートを建てて不動産経営を行うメリットの1つとして、家賃収入という安定した収入を長期的に得られる点が挙げられます。アパートなどの賃貸物件は入居期間が2年以上となる場合が多いため、一旦入居者が決まれば数年間は安定した家賃収入が見込めるでしょう。流行や季節によって収入が変動しにくい点も魅力的です。

ただし、何もしなくても安定した不労所得を得られるというわけではありません。「長期的な収支計画を立てる」「維持管理費用を積み立てておく」「空室対策を十分に行う」など、安定した収入を維持するための準備が必要であることも覚えておきましょう。

節税効果がある

アパートを建てて経営すると、各種の税金を節税できるというメリットもあります。アパート経営で節税できる主な税金の種類や対策方法を確認し、税制上の優遇制度をうまく活用しましょう。

◆アパート経営で節税できる主な税金と対策方法

・相続税

相続税とは、一定の金額以上の財産を相続する場合に相続人に課される税金のことです。相続税の納付額は相続税評価額によって決まりますが、土地や建物などの不動産は現金よりも相続税評価額を低く抑えられる効果があります。アパートのように土地や建物を他人に貸し出す場合は相続税評価額をさらに下げられるため、大きな節税効果が見込めるでしょう。

また、アパートのある土地が「小規模宅地等の特例」における「貸付事業用宅地」に該当する場合、200㎡までの土地の相続税評価額が50%まで減額されます。さらにアパートローンが残っている場合は相続財産から負債として差し引けます。

・所得税

所得税とは、個人の1年間の所得に対して課される税金のことです。アパート経営で得た家賃収入などの収益は不動産所得に該当し、その所得額に応じた所得税を納める必要があります。しかし、不動産所得で赤字が出た場合は、給与所得や事業所得といった他の所得と合算して所得の総額を抑えることが可能です。この制度を「損益通算」と言います。

個人の損益通算において、初年度に控除しきれなかった赤字は3年間繰り越して控除を受けられます。また、事業形態や所得額によっては、節税対策として青色申告や法人化を検討するとよいでしょう。

・住民税

住民税とは、自身が住んでいる都道府県・市区町村に納める地方税のことです。所得税と同様に個人の所得額に応じて課税額が決まるので、所得税の節税対策を行うことで住民税の節税にもつながります。

アパート経営には大きな節税効果がありますが、所得税や住民税の節税対策に重点を置きすぎると経営がうまくいかなくなるリスクもあります。利益と節税のバランスをうまく取るよう心がけましょう。

アパートを建てるときに必要な検討事項

アパート経営を成功させるには、アパートを建てる前にさまざまなことを検討する必要があります。検討が不十分だとアパート経営に失敗する恐れもあるため、下記のようなポイントを十分に検討するようにしましょう。

◆アパート経営を建てる際に必要な検討事項・守るべき鉄則

  • アパートが建てられる土地か
  • アパートのニーズがあるか
  • 入居者のターゲットはどこか
  • 自己資金をどの程度用意するか
  • 間取りや設備はニーズに合っているか
  • 建築費用は適切か
  • 利回りはどの程度か
  • アパートの管理はどうするか

ここでは、上記8つの検討事項について詳しく解説します。

アパートが建てられる土地か

土地をアパート経営に活用することを検討する際には「そもそもアパートを建てられる土地かどうか」を事前に確認する必要があります。まずは活用を検討している土地の用途地域を確認し、アパートを建てられない土地に該当していないかチェックしましょう。

◆アパートを建設できない主な土地

  • 市街化調整区域
  • 工業専用地域
  • 農地転用(※)できない土地
    ※農地を農地以外の用途(宅地など)で使用すること

また、接道義務など建築基準法で定められている条件を満たしているかどうか、建築制限などをクリアしているかどうかをチェックすることも大切です。アパートの階数を検討する際に重要な「建ぺい率」「容積率」についても併せて確認しておきましょう。

  • 建ぺい率…土地の広さに対し、どの程度の面積の建物を建築してよいかを示す指標
  • 容積率…敷地内に建築できる建物の延床面積(全階の床面積の合計)を示す指標

建ぺい率や容積率は地域・用途によって異なります。自治体の都市計画課などで事前に調べておきましょう。

アパートのニーズがあるか

アパート経営で安定した収益を上げるには、空室率を下げて稼働率を上げることが大切です。空室リスクを可能な限り抑えるためにも、アパートの建築予定地があるエリアで賃貸需要があるかどうか事前に確認しておきましょう。

◆アパートのニーズを調べる方法

  • インターネットを活用して人口動態や家賃相場を調べる
  • 賃貸仲介会社や管理会社に相談する
  • 土地周辺を実際に歩いてみて周辺環境をチェックする

入居者のターゲットはどこか

アパートを建築する際には、どのような入居者が住むか具体的にイメージすることが大切です。アパート需要の調査の結果をふまえた上で、どのような入居者をターゲットとするアパートを建てるか検討し、間取りや設備を選定する参考にしましょう。

◆入居者の主なターゲット分類と支持されやすいアパートの特徴

入居者のターゲット分類 需要の高いアパートの特徴
ファミリー世帯
  • 3LDK~4LDK
  • キッチンや浴室が広い
  • 学校や公園に近く治安が良い地域にある
単身者(学生・社会人)
  • ワンルームで20㎡前後の面積
  • 最寄駅までの距離や通勤・通学の利便性が重視される
単身者(女性)
  • ワンルームで20㎡前後の面積
  • セキュリティ対策(オートロックなど)や防犯面(人通りの多い大通りに面しているなど)が重視される
ペット飼育希望者
  • 「ペット可」「ペット共生型」のアパート
  • 共用部分にペット用の設備が整備されている
高齢者世帯
  • バリアフリー設計
  • 低層アパートでもエレベーターがある
  • 静かな環境で医療機関や商業施設にもアクセスしやすい

自己資金をどの程度用意するか

年収や資産、物件の価格によっても異なりますが、アパート経営を開始する際に必要となる自己資金の目安は、「物件価格の1~3割」と言われています。例えば、物件価格が5,000万円の場合、自己資金として500万~1,500万円、残りの3,500万~4,500万円をアパートローンで借り入れるケースが多いでしょう。

「物件価格の1~3割」という数値はあくまで目安であり、自身の経済状況によってはこれよりも多くの自己資金を投入しても問題はありません。物件価格に占める自己資金の割合が高いほど借入金額を抑えられるため、ローン審査も有利になるでしょう。

自己資金が少なく借入金額も多いと、ローン審査が厳しくなる場合があります。一方、自己資金として財産の大部分を使用すれば、修繕費などの急な出費に対応できない事態になりかねません。金融機関などの専門家に事前に相談し、無理のない資金計画を立てるようにしましょう。

間取りや設備はニーズに合っているか

賃貸物件を探している方の多くは、部屋の間取りや設備を重視して部屋選びを行っています。ニーズが高く人気のある間取り・設備のタイプは、入居者の属性によって異なります。アパートの入居者ターゲットや立地条件などから、入居者ニーズを満たす間取り・設備を決めましょう。

◆入居者ターゲット別・ニーズの高い間取り・設備

入居者ターゲット 選ばれやすい間取り・設備
ファミリー世帯
  • 3LDK以上(大人2人・子ども2人の場合)
  • 十分な収納スペース
  • 生活動線が効率的な間取り
単身者(学生・社会人)
  • ワンルームまたは1K(風呂トイレ別・エアコン付き)
  • 宅配ボックスなど利便性の高い設備がある
  • 女性にはオートロック付きアパートも人気
二人暮らし
  • 1LDK~2LDK(LDKとは別に1~2部屋の個室)

建築費用は適切か

アパートの建築費用は数千万円規模となるため、価格が適切かどうか確認することは非常に重要です。アパートの建築費用は建物の構造、設備の仕様、建築業者などによっても異なりますが、概ね下記の戸当たり単価を目安とするとよいでしょう。

1R 約500万円~
1LDK 約800万円~
ファミリータイプ 約1200万円~

※建物本体価格から1 戸当たりの単価を算出

※解体費・給水排工事やオプション工事費は除く

例えば、30坪の土地に1Rの部屋が6戸あるアパートを建てる場合は、「約500万円×6戸=約3000万円」の費用が目安となります。一方、1部屋を広くとってファミリータイプの部屋を3戸とする場合は、「約1200万円×3戸=約3600万円」が目安です。

部屋の広さによって、間取りや必要な設備も変わります。建築費用の概算を把握するためには、戸当たり単価を参考にするとよいでしょう。

利回りはどの程度か

アパートを経営する上での「利回り」とは、アパート経営への投資額(初期投資)に対してどの程度の利益があるかというリターンの割合を示した数値です。アパート経営では3種類の「利回り」があるため、それぞれの概要や算出方法を確認しておきましょう。

◆アパート経営における利回りの種類

概要 計算式
表面利回り 投資額に対する年間家賃収入の割合 年間家賃収入÷投資額
想定利回り 空室がない状態での投資額に対する年間家賃収入の割合 空室を0としたときの年間家賃収入÷投資額
実質利回り 投資額に対する年間純収益の割合 (年間家賃収入-年間経費)÷投資額

利回りを判断する際には、家賃収入だけでなく経費も考慮した実質利回りを中心に考えることが大切です。新築アパートの場合、理想的な利回りは7%と言われています。最低でも5%は超えられるよう経営に取り組みましょう。

アパートの管理はどうするか

アパート経営では、入居者の募集や審査、家賃の回収、トラブル対応、建物のメンテナンスなどさまざまな管理業務が発生します。アパートの管理方法には主に次の3つの方法があるので、メリット・デメリットの両方をふまえた上で自分に合った方法を選びましょう。

◆アパートの管理方法

・オーナーによる自主管理

オーナー自身がアパートの管理業務を行う方法です。管理委託料が発生しない一方で、手間や時間がかかるというデメリットもあります。

・管理会社への管理委託

管理会社や不動産会社にアパートの管理を依頼し、管理業務を代行してもらう方法です。不動産管理に関する専門知識があるため、トラブル対応も安心して任せられますが、管理委託料が毎年発生することに注意しましょう。

・サブリース

オーナーがサブリース会社にアパート一棟をまるごと貸し出し、サブリース会社と入居者が賃貸借契約を結ぶ方式です。入居者の有無にかかわらず一定の収入を安定して得られるというメリットがある一方、管理委託よりも収益性が低いというデメリットもあります。

少しでも安くアパートを建てるには?

アパートの新築には多額の建築費用が必要となる上に、近年では建築費用が上昇傾向にあることから、なるべくコストを抑えてアパートを建てたいと考えている方も多いでしょう。

ここでは、少しでも安くアパートを建築するための3つの方法と、コストを抑えられる理由をそれぞれ解説します。

過剰な設備は取り入れない

アパートの設備を充実させることは、近隣のアパートとの差別化を図る上でも重要です。しかし、最新の高機能で利便性の高い設備を導入しても、入居者が使いこなせないケースや必要としないケースも多くあります。ターゲット層を考慮して、必要な設備や人気の高い設備は取り入れつつ、過剰な設備・機能は取り入れないようにしましょう。

◆アパートに最低限求められる設備・人気の高い設備

最低限必要な設備 人気の高い設備
単身者向け
  • 室内洗濯置き場
  • モニター付きインターフォン
  • シューズボックス
  • バス・トイレ別
  • エアコン
  • 無料インターネット
  • エントランスのオートロック
  • ホームセキュリティ
  • 浴室換気乾燥機
  • 宅配ボックス
ファミリー向け
  • 室内洗濯置き場
  • モニター付きインターフォン
  • 独立洗面台
  • 温水洗浄便座
  • ガスコンロ(2口・3口)
  • 無料インターネット
  • 宅配ボックス
  • 追い炊き機能
  • システムキッチン
  • エントランスのオートロック

設計施工一貫方式で依頼する

設計施工一貫方式とは、設計と施工を1つの会社が一貫して行う方法であり、多くの大手ハウスメーカーがこの方式を採用しています。設計施工一貫方式で依頼した場合、設計料は建築費の1~3%程度となり、建築費の10%が設計料の相場となる設計施工分離方式よりもコストを抑えられるでしょう。

設計施工一貫方式には工事管理がスムーズに行えるというメリットがある一方で、建築費用の妥当性を検証できる機会が少ないというデメリットがあります。全体の費用が高くなるケースもあるため、依頼前に複数社から見積もりを取るなど、建築費用が適正かどうか確認することが大切です。

工法や構造を再検討する

建物の規模が同程度であっても、工法や構造によって建築費用は大幅に異なります。「ハウスメーカーに依頼して規格化された建築資材を使用する」「坪単価の低い木造や軽量鉄骨を選ぶ」など、初期費用を抑えられるよう工法・構造を再検討しましょう。

なお、企業や業者によって得意な工法・取り扱う構造は異なります。それぞれの業者の特徴を事前に確認した上で、適切な業者を選ぶようにしましょう。

アパート建築会社を選ぶ基準は?

アパート建築を依頼する会社には、主に「ハウスメーカー」「工務店」「設計事務所」「デベロッパー」の4つがあります。

◆アパート建築を手がける業者の特徴

・ハウスメーカー

住宅の建築・販売を専門的に行う業者であり、全国的に知名度が高いハウスメーカーもあります。規格化されているため品質の信頼性が高く、管理体制も構築されている一方で、デザインの自由度が低くコストが割高になる傾向がある点に注意しましょう。

・工務店

地域密着型の住宅建築業者であり、地域特有のニーズや環境に対応できるという強みがあります。ハウスメーカーよりも建築コストを抑えられる傾向があり、間取りやデザインなどの融通がききやすい一方で、工務店ごとに技術力の差があることに注意が必要です。

・設計事務所

設計をメインで行っているため、こだわりを詰め込んだアパートを建てられるのが設計事務所の特徴です。一方、施工などは他の業者に依頼する必要があり、信頼できる施工会社を改めて探さなくてはなりません。

・デベロッパー

土地の調査から建物の完成まで、すべての交渉や折衝・管理を行うのがデベロッパーです。開発する土地の調査、購入、開発計画の立案だけでなく、行政とのやり取りや周辺住民への説明、建築会社への発注から施工管理まで建物作りの全てを担います。

ここでは、上記の特徴をふまえた上で、建築会社選びの際のポイントを解説します。自分に合った建築会社を選び、安定した収益を得られるアパートの建築を目指しましょう。

アパート建築の実績があるか

建築会社には、アパート建築の実績が多い企業もあれば少ない企業もあります。特にハウスメーカーや工務店は、アパートだけでなく一戸建て住宅や企業ビルなどの建設に幅広くかかわっているため、知名度だけで判断しないことが大切です。アパート建築の実績を確認した上で、依頼する建築会社を選びましょう。

アパート建築の実績を確認する際には、どの程度のアパートを建築しているか調べるとともに、どのような強みがあるかを確認することが大切です。「アパート経営のノウハウが豊富」「自社物件の仲介を優先的に行う」「集客力が高い」「入居者サポートが手厚い」など、各社の強みを把握しておきましょう。

どのような構造・工法に対応しているか

アパート建築における「構造」とは建物の基本的な骨組みのことであり、「工法」は工事の施工方法を指します。また、材料とは「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」「鉄骨・鉄筋コンクリート造」など、建物に使用する主な資材のことです。

構造は、主に建物を柱と梁で支える「軸組構造・ラーメン構造」と、建物を壁で支える「壁構造」の2種類に分けられます。また、工法は、現場で施工を進める「在来工法」と、一定の施工を工場で行う「プレハブ工法」の2つがあります。軸組構造・ラーメン構造の場合は在来工法が多く、壁構造の場合はプレハブ工法で行われるのが一般的です。

アパートを建てる際には、目的に合った材料・構造・工法を選ぶことが大切です。防音性重視の場合は鉄骨・鉄筋コンクリートのラーメン構造による在来工法、コスト重視の場合は木造の壁構造によるプレハブ工法(2×4)などを検討するとよいでしょう。対応できる構造・工法は建築会社によって異なるため、事前に確認することをおすすめします。

他社と比べて建築費はどの程度か

建物の規模や坪数、材料、構造・工法などが同じ条件のアパートを建築する場合でも、その建築費は建築会社によって大きく異なる場合があることに注意が必要です。例えば、設計から建築工事までの大部分を自社施工できる会社と、施工管理以外はすべて下請け業者に外注する会社では、後者のほうが費用が高くなる傾向があります。

また、複数の会社から相見積もりを取り、各社の見積書を比較して発注する企業の検討を行うことも大切です。また、依頼する建築会社を決めて打ち合わせを進める過程でも複数回見積もりを取り、金額の確認や内容の検討を重ねるよう心がけましょう。

信頼関係を結べそうか

アパート建築会社や担当者は、アパートの設計から竣工まで、さらにアパート管理を依頼する場合は建築後も長期間にわたって付き合うことになるビジネスパートナーです。下記のようなポイントをチェックし、信頼関係を築ける会社・担当者かどうかを見極めましょう。

◆アパート建築会社の担当者と接する際のチェックポイント

  • こちらの話をきちんと聞いてくれているか
  • 意見を言いやすい人柄か
  • レスポンスが早く明確であるか
  • 意見や要望に対して柔軟に対応してくれるか
  • 自社の強みだけでなく弱みも隠さず伝えてくれるか
  • 自社の都合を優先した案ばかりを出してこないか
  • アパート建築に関する知識やノウハウが不足していないか
  • 具体的な数値やデータに基づいた提案をしてくれるか

金融機関と良い関係性があるか

アパートを建てるオーナーの多くは、自己資金だけでなく金融機関からのアパートローンを活用しています。アパートローンを組む金融機関をオーナー自身で選ぶ場合もありますが、工事を請け負った建築会社が金融機関を紹介するケースもあります。

アパート建築会社と金融機関との間に良好な関係性がある場合、アパートオーナーにとってより有利な商品を紹介してもらえるケースもあります。アパート建築会社の実績や事業計画などに一定の信頼があるため、オーナー個人に問題がなければローン審査もスムーズに進むことが多いです。

トラブルに対応できるか

アパートの建築期間に起こり得るトラブルに対応できるスキルがあるかどうかも、アパート建築会社を選ぶ1つの基準となります。まずは信頼できる企業を選び、「請求費用が契約時と異なる」「工期が大幅に遅れる」「施工不良が多い」などアパートの建築契約に関するトラブルのリスクを低減しましょう。

また、アパート建築中に発生する恐れがあるトラブルとして、近隣への騒音や日照の問題によるトラブルなどが考えられます。これらのトラブルを未然に防ぐための対策を講じているか、トラブルが発生した際にはどのような対応をしているかなど、事前に確認しておくことが大切です。

アフターサービスはしっかりしているか

建築会社を選ぶ際には、保証やメンテナンスなどのアフターサービスが整っていることも重視しましょう。建物の基本構造部分は10年以上の保証が義務付けられていますが、最近では会社独自の保証を20年以上付けている企業も少なくありません。有料の定期点検を受けることで保証期間を60年まで延長するサービスを提供する企業もあります。

また、関連企業にアフターサポート専門の会社をもっている企業を選ぶこともおすすめです。建物に不具合が生じた場合でも、サポート会社と連携してすぐに対応してもらえるでしょう。竣工後の修繕を気軽に相談できる点も大きな魅力の1つです。

 

まとめ

アパートを建てるとき、土地の調査や資金計画などに必要な期間も含めると完成までには1年~1年半程度かかります。アパート経営を行うと、安定した家賃収入が得られるほか、節税効果も期待できます。経営を成功させるためには、建築中から入居者を集めたり、立地から推測されるニーズに合わせた間取りのアパートを建てたりすることが大切です。

アパート建築を依頼できる会社には、ハウスメーカーや工務店、設計事務所、デベロッパーなどがあります。長期間かかわることになる上、会社によって建築実績や得意な工法が異なるため、アパートを建てる際は業者選びに力を入れましょう。業者について実績やサービス内容をしっかり調べた上で、信頼できるかどうか自分自身で吟味して決めることが大切です。

この記事の監修者

白坂大介

白坂 大介

保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士 | 宅地建物取引士 | 住宅ローンアドバイザー | 証券外務員1種

経歴

大阪市東淀川区 出身
上宮高等学校 卒業
京都産業大学 経営学部 卒業

2004年
ハウスメーカーへ入社
2008年
ファイナンシャルプランナー取得
2009年
総合保険代理店へ入社
2010年
FP Office Shirasaka 開業
2013年
ジョインコントラスト株式会社 設立

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